噂のあの子。６

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"Aが歌う番だよ"









いつかのベクの言葉









強引に背中を押して
部屋に押し込まれたかと思えば
すぐ手渡されたヘッドホン









"俺をなめないでほしいな〜(笑)"









なんて腕を組みながら
得意気に笑ってるのを見たら
つられて笑っちゃったっけ









なんで私が、なんて思ってたのに
急かされれば素直にヘッドホンをつけて









"これ…"









聞き覚えのあるメロディーに
少し胸がぎゅっとなって









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"お前が昔歌ってた曲でしょ？"









そう言って優しく笑うベクに
私の心はまた更にぎゅって締め付けられたんだ









…………………









ベクは覚えてる？
きっかけをくれたのは全部
あなただってこと。









歌うきっかけも
また夢を追うきっかけも
全部全部ベクがくれたんだよ









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"どうしても一緒に歌いたいから"









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器用そうで
不器用なベクの言葉









その言葉のおかげで私は
こうやって夢を掴めたのに、









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…どうして？









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『…なんで喜んでくれないの、？』









こんな予定じゃない
もっと上手く返すつもりだったけど









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『…もういい』









そんな言葉と共に
感情のままベクに向かって
あの白い袋を投げた









彼の胸の辺りに当たって
床に落ちたそれはくしゃくしゃで
まるで私の心を表してるみたい









もうどうにでもなれ









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