【鋼の錬金術師】三兄弟の錬金術師 Ⅲ (ページ9)

今日:3 hit、昨日:34 hit、合計:9,711 hit

・ページ9

「へぇー世の中には悪どい奴がいるもんだねぇ」

「オレもムカッ腹立ったからさ」

「馬鹿だねぇ。炭鉱の権利書をそのまま持ってりゃ老後も安泰なのに」

「あんまり危ない事しちゃダメだぞ。子供なんだから」

『まあこんな兄を持っちゃったもんですから…』

「ボクと姉さんは平和に生きたいと思ってるんですけど兄さんがねぇ……」

咀嚼音と料理の匂いが立ち込める部屋の中、私達兄弟は師匠達と共に夕食を摂っていた。やはり食卓というのは話にも花が咲きやすいようで、皆口々に今までの思い出を話している。

「しかし殺伐とした旅をしてるねぇ」

「そんなひどい出来事ばかりしゃないですよ」

感心するように問うメイスンさんへ、アルは否定の意を込めながら手を振る。私もアルに同調するように首を横に振った。

「ラッシュバレーで出産に立ち会ったもんな！」

「師匠！ボク達赤ん坊をとりあげるの手伝ったんですよ！」

「バッカおめー！手伝ったって言えるのかよあれで！こん中で動いてたのAだけじゃねーか」

『2人とも狼狽えてただけだったもんなぁ』

「あはは！“案ずるより産むが易し”ってあの事だよね」

あの怒涛の出来事を思い出しながら私達は笑い合う。本当に一時はどうなるかと思ったもんだ。

「家族が協力して、母親も命をかけて、みんなに祝福されて人間は産まれてくるんですね」

それまでコーヒーを啜りながら静かに話を聞いてくれていた師匠は、やわらかい笑みを浮かべ口を開いた。

「そうだよ。おまえ達もそうやって生を受けた。自分の命に誇りを持ちなさい」

時々見せる師匠の女性らしい穏やかな一面。
それを目の当たりにした私は、胸の辺りに感じる暖かさに自然と口角が上がった。

「そういえば」

何か思い付いたような声色で、エドが言葉を発する。

「師匠のとこは子供は居ないですけど……」

「エドワード君！！」

―――耳の奥が振動する程の大声と共にテーブルが激しく揺れる。

一瞬何が起こったのか分からず、私は呆然としながら声を発したメイスンさんを意味も無くじっと見つめた。

空気が、一瞬で張り詰めた様な気がした。

「………あ―――…ほら、あれから君達の錬金術も進歩したろう？」

指をくるくると回しながらメイスンさんは目を壁の方へ逸らし話し始める。

「修行の成果を見せてくれないかなぁ」

「ああ、それならいくらでも！」

彼の言葉に、エドの表情がパッと明るくなる。