【鋼の錬金術師】三兄弟の錬金術師 Ⅲ (ページ8)

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分かりやすく慌て始めるエドの太腿を軽く抓り冷静になるよう私は無言で施す。エドは私を横目で見ると、面目なさそうに項垂れた。

「……賢者の石ねぇ…」

心当たりでもあるのだろうか。
師匠が何か思い出そうとしている様子で目を伏せると、隣で静かに聞いていたシグさんが「そういえば」と口を開いた。

「この前の旅行で中央(セントラル)に寄った時、石にやたらと詳しい錬金術師に会ったよな」

「ああ、あの男！えーとたしか…

“ホーエンハイム”って名乗ってたっけ」

『！！！』

ホーエンハイム。
私……いや、私達にはその名前に心当たりしかなかった。するとその名を聞いたアルが食い気味に師匠へ質問を投げ始める。

「どんな人でした？！」

「割と背が高くて…金髪メガネにアゴ髭だったかな」

それを聞いて私は“あの人”だと確信した。

「年はよく分からなかったけど……結構男前だったよ」

男前、と師匠が言うとシグさんから何やら禍々しい雰囲気が漂ってきた。まあいつもの嫉妬だろう。

「やっだぁ！あんたの方がいい男よぉ！！」

嬉しそうに夫の嫉妬を喜びながら肘でシグさんを突く師匠。しかし、私達はそんな2人にリアクションが出来るほど余裕がなかった。

「生きてたんだ……」

『どこで何してるんだと思ってたけど……まさか中央(セントラル)に来てたとはな…』

アルの呟きに賛同するように私の口からもつい思っていた事が零れる。ただならぬ私達の様子に師匠とシグさんは怪訝な顔を向けた。

「知り合いか？」

「……父親です。ボク達の……」

重苦しい空気の中、アルが代表するように真実を口にする。詳しい事情を知らない師匠はその言葉を聞くと柔らかく微笑んだ。

「あの昔出てったっていうお前達の父親？丁度いいじゃないか。まだ中央にいるかも…「あんな奴！！」

師匠の提案を、エドは悲痛な声で遮った。
辺りにずっしりと暗い空気が漂う。私はそんな雰囲気に耐えられず自分の膝を見つめた。

「あんな奴に頼るのだけはごめんだ…！！」

エドの口からギリ、と奥歯を噛み締める音が聞こえる。

『…あ、あの、父さん石について何か言ってました？』

「ん〜〜〜〜…」

私からの質問に、師匠はついさっきやった様に顎に手を当てて考え込んだ。

「長年の望みがもうすぐどうとか…うれしそうに語ってたっけ」

***