【鋼の錬金術師】三兄弟の錬金術師 Ⅲ (ページ35)

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第19話師弟のけじめページ35

ぴちゃ、と水を張った桶に雫が落ちる音が静寂の中に響く。

こじんまりとした部屋に椅子を向かい合わせて話を交えていた師弟の面々。下を向くA達の静寂を破ったのは、大きなため息をつくイズミだった。

「……三丁目の通りに…」

『…？』

「……棺桶屋ががあるから自分のサイズに合ったのを作ってこい！！」

鬼の形相で青筋を浮かべたイズミが拳を叩きつける。般若のような師匠に兄弟揃って情けない悲鳴を上げた。

「冗談はさておいて…あれほど人体錬成はやるなと言ったのに。師弟揃ってしょーもない」

「やっぱり師匠も…」

エドの鋭い質問に、イズミの眉間に僅かに皺が寄る。少しの沈黙が続いたあと、イズミは自身の腹部に手を当てた。

「内臓(なか)をね、あちこち持っていかれた。大馬鹿者だよ本当に」

その言葉の意味は弟子たちに対しての𠮟責か、それとも自身への戒めか。

「ばかたれ！」

「すいません！」

「監督不足！」

『はい！』

「ばか弟子！」

「おっしゃる通りで！」

「豆！！」

「………はい…」

怒涛の罵倒の雨に素直に返事を返す。すると、イズミは一度大きく息を吐くとAの方へと目を向けた。何を言われるのかと身を固くしていると、

「A、何かこの二人に聞きたかった事があるんじゃないの」

そう、問いかけた。

周囲の視線が一気にこちらへと向けられる。ゆっくりと兄弟の様子を伺えば、二人も緊張した様子でこちらの出方を探っているようだった。やはりイズミに隠し事は通用しないな、と頭を乱雑に掻く。

そうしてもう一度兄弟の方へと向き直り、Aは金色の双眸で二人の姿をしっかりと捉えた。

『なんで私に隠れて人体錬成を…なんで私に何も言ってくれなかったんだ？』

今まで言いたくて言いたくてたまらなかった質問を始めて二人にぶつける。

その質問を聞いた二人の様子は、一言で表せば“動揺”だった。しかし、いつか聞かれるのを分かっていたのだろう。エドは深呼吸をすると、Aと同じ色をした双眸をしっかりと合わせながら意を決した様子で口を開いた。

「…Aの喜ぶ顔が見たかったんだ」

『…え？』

意外。予想外の答えに脳がフリーズする。

「もちろんオレたちがもう一度母さんに会いたかったってのも一番大きい理由だった。けどお前を人体錬成の研究に誘わなかったのは…」

「今まで苦労させた分、今度はボク達だけで母さんを蘇らせて…それで…」

『私にもう心労をかけないために…？』

二人の首が上下に揺れた。