【鋼の錬金術師】三兄弟の錬金術師 Ⅲ (ページ34)

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「あれは人間なんかじゃ無かった！！あんな恐ろしいものを作り出す技術なのかい錬金術ってのは！！」

あの日、あの錬成陣の中心で息絶えていたモノ。A自身はハッキリと見たわけではない。しかし、ピナコは違う。彼女はハッキリと見てしまったのだ。錬金術の禁忌を犯した先に作られてしまったあれを。

「あんたは！！またあの子らをそっちの道に引きずり込もうってのかい！！」

「A？」

そもそも、Aは今マスタングとピナコの話で初めて知ったのだ。あれが人体錬成での産物だった事を。
兄弟は話してくれなかった。全く口を開いてはくれなかった。あの錬成陣が何を作り出そうとしたものだったのかをなんて。自分で確かめる勇気もなく、Aは今日この日まで知ろうとしてこなかった。

「A…！」

『え？』

控えめだが力強い声でウィンリィに肩を揺さぶられる。そしてその時、足元ににぽつぽつと小さな染みが出来ていることに気が付いた。

「ほらこれ…ハンカチ」

『あ、』

泣いている。眼帯をしていない方の目からとめどなく涙が溢れ出していたことに、その時初めて気が付いた。八の字に眉を下げるウィンリィにゴシゴシと乱暴に涙を拭われる。

「もう限界だよA。このまま話を聞いてたら心が持たない…ほら、あっちの部屋で座ってて。お茶持ってくるから」

『＿＿＿』

思わずウィンリィの言葉に甘えそうになった。今にもこの場から耳を塞いで逃げて、座り込んで蹲り、現実から目を反らしたくてたまらなかった。
しかし＿＿＿

『ありがとうウィンリィ。ごめん、私やっぱりまだここにいるよ』

「でも…」

『逃げたくないんだ。兄弟からも、現実からも』

Aの言葉に、ウィンリィがハッとする。きっとウィンリィもAが兄弟から避けられているのを見ていただろうし、A自身も兄弟から逃げていたのを知っていたからこその反応だ。
ウィンリィは小さく頷くと、Aを残してその場から立ち去った。

『…はぁ』

大きく息を吸い、深く吐く。

ぎゅっとドアノブを捻り、Aは堂々と一歩を踏みしめた。

突然の参入者に、部屋にいる面々が目を見開く。

その様子を一瞥し、Aは焔(ひ)の付いた眼で発声した。

『私も同席させてください』

驚く兄弟の双眸を、力強い金色の瞳が真っすぐと射抜いていた。

＿＿＿そしてしれから約一年後、私達兄弟は家を業火で包んだ。