【鋼の錬金術師】三兄弟の錬金術師 Ⅲ (ページ4)

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そう、上着はまた縫えばいい。それにあの上着は母さんから買ってもらった大切な服だ。この世にあの服の変わりなんてない。
しかしいくら丁寧に断っても中々引かないパニーニャ。強情な彼女に頭を悩ませていると、見かねたアルが一つ提案をしてくれた。

「じゃあさパニーニャ。裁縫道具を姉さんに買うってのはどう？」

裁縫道具か。今持っている物はもう結構年季の入ったものだからちょうど買い替えようと思ってたっけ。願ったり叶ったりだ。
素晴らしい提案をしてくれた弟に親指を立てつつ、私はパニーニャに向き直る。

『パニーニャはそれでいい？』

「裁縫道具…そんなのでいいの？」

『ああ、ちょうど新しいの欲しかったところだし』

「…眼帯のねーちゃんがそれでいいなら」

私がにっこりと笑って頷くと、パニーニャはそれまで不安そうだった表情を安心した様子で綻ばせた。

――その後、私達は工房を出て街へ戻った。パニーニャに小型の裁縫道具を買ってもらった後、私達は急ぎ足で駅へ向かった。ゴォッ、と汽笛の鳴る音が響く。
その音にエドは顔を青くし、後ろを走る私とアルに向かって叫んだ。

「A！アル走れ！」

私達が来るタイミングを見計らったかのように汽車が走り出す。乗客の視線が刺さる中、羞恥心を殺して必死に走った。目の前を走る汽車の最後尾のバルコニーへアルが先に飛び乗り、私、エドという順番でアルに補助されながら飛び乗る。
私達を見送るためについてきていたウィンリィとパニーニャの方を向き、エドは再び大声を張り上げた。

「ばっちゃん心配してるぞ！ちゃんと電話しとけよ！」

「あんたに言われたくないわよ！」

「あっはっは！あのじじいからしっかり技術盗んで次に会うときはもっといいやつ付けてくれよな！！」

徐々に小さくなっていくウィンリィとパニーニャの姿。ウィンリィは大きく手を振りながら「まかせといて！」とよく響く声で高々と叫んだ。

***

「＿＿＿そうかい、ラッシュバレーに…」

―広い部屋に犬と二人で、ピナコは受話器を片手に頷いている。
飼い犬であるデンは、そんなピナコの様子を後ろから静かに見守っていた。

「ああ、心配する事ぁ無いさ。しっかり修行しといで＿＿＿そう、エド達は師匠の所へ行ったのかい」

ピナコの髪が、どことなく寂しそうに揺れる。

「うん、じゃあ元気でやるんだよ」

そう一言いって受話器を置くと、ピナコは自分とデンしかいない部屋を眺め、ふっとため息をついた。

「この家も広くなるねぇ…」

***