【鋼の錬金術師】三兄弟の錬金術師 Ⅲ (ページ28)

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第18話叩け、天国の扉ページ28

＿＿＿あれは、ちょうど肌寒くなってきた頃だった。

イズミの修行も区切りがつき、リゼンブールで兄弟三人平穏に暮らしていた。錬金術の技能が上がったA達は度々大きな物の修理を任されるようになったり、錬金術を高めるための研究に没頭したり、何気ない日常を謳歌している。

Aの髪はあの出来事以降伸ばしていない。もともと短い髪型を好んでいた事もあり、伸ばしては自分で切りそろえているのだ。
最初に髪を切ったときは二人に驚かれてしまったが、どこか安心したような表情を浮かべていたのを覚えている。

『今日一日ウィンリィのとこでちょっとアシスタントするから家空けるね』

「アシスタント？お前機械鎧に興味あったの？」

『違う違う。手先器用だから単純な作業に付き合わされるだけだよ』

「ほーん」

心底興味なさげにエドが返事をする。なら最初から聞くな。それと対照的に可愛い双子の弟のアルは「頑張って」とエールをくれた。どこぞの兄貴とは大違いである。
Aはウィンリィとの作業で使う筆記用具をかばんに詰めると、そのまま家を後にした。

家を出て丘を下り、真っすぐと彼女の自宅へと向かう。扉を叩けば、金髪を揺らしながら明るい笑顔でウィンリィが出迎えてくれた。

「いらっしゃい！今日もよろしくね」

『うん、任せて。今日はどうしたらいい？』

「えっとまずは＿＿＿」

ウィンリィの華奢な手に腕を引かれながら今日の業務内容を伝えられる。見慣れた作業部屋に着いてから先ほどの説明をメモに取り、Aはウィンリィの作業机の隣のこじんまりとした席へ座った。

『この部品をこの穴に通せばいいんだっけ？』

「そうそう。あ、あとその辺りちょっとオイルこぼれてるから気を付けてね」

『拭けよ』

ため息をつくAを他所に、ウィンリィは平謝りするだけだ。まあいつもの事なので今更気にしたりしない。そんなことをしながら言われたことだけを黙々を作業していると、不意にウィンリィが口を開いた。

「そういえば最近エドとアルが怪しいのよね」

『兄さんとアルが？』

「そうそう」と口ずさみながら目線だけは機械鎧に向けてウィンリィが相槌を打つ。

『具体的には？』

「ん－っと、Aがいない間やたら二人の行動がおかしくて。わざわざ家を出てまで周りを確認してからしばらく引きこもったり、Aが帰ってくる時間帯になると慌ただしく物音がするのよ」

『なんでそんな事知ってんの？』

「たまたまあんた達の家に用が会った時に見ちゃったのよね」