【鋼の錬金術師】三兄弟の錬金術師 Ⅲ (ページ24)

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“一は全、全は一”

つい昨日、Aを孤島に置き去りにする直前にイズミが言い残した言葉だ。1ヶ月でこの答えを見つけなければリゼンブールに送り返すとそう付け加えられて。

水面下で遊泳する魚を鋭い木の枝で突き刺しながら首を捻った。昨日の夜からずっと考えてはみたが、分かるようで分からない気持ちの悪い感覚が続いている。

『そもそも兄さんとアルとは別の島に置き去りにする必要はないでしょうに…』

イズミ曰く、「アンタは兄弟がいると張り切るタイプだから試練の意味が無くなる」らしい。

まあ何も言えなかったのも事実だが。

＿＿＿そして島に置いて行かれてから3日、5日、2週間と時が過ぎた。身体は泥と汗で汚れ、紺緑のワンピースは布代わりに使っていたせいでところどころ破れている。栗色の髪は乱れに乱れ、Aは兄弟が居ないその状況に酷く憔悴していた。

“一は全、全は一”

昔から＿＿母が亡くなった頃から似たような事はずっとずっと考えていた。

母親として完璧だった彼女は土に還り、リゼンブールの土壌の糧となる。そして彼女の後を子供達が継ぎ、次の世代へ身を引き渡す為に生きるのだ。
天寿を全うした後、私達は母同様土に還り自然の糧となる。

こうして世代…世界はぐるぐると回るように循環して…まるで錬金術の法則のように。

『＿＿ぁ』

頭がすっきりと冴えた気がした。

***

「答えを聞こう」

『…１ヶ月って言ってませんでしたっけ』

島に置き去りにされてから約3週間超。目の前には腕を組み、凛々しく背筋を正して仁王立ちしているイズミの姿があった。

困惑しているAを他所に、イズミはふっと笑みを零す。

「哲学＿＿いや、理論的な事を構築するのは得意そうに見えたんでね。あの2人より答えに辿り着くのにそう時間はかからなそうだったし」

『はぁ…』

「それで？」

鋭い眼差しがAを貫く。余りの緊張感に、無意識に自身の喉が上下に動くのを感じた。
垢だらけの手に汗を滲ませ、Aはイズミの瞳を真っ直ぐ見つめた。

『＿＿＿“全は世界、一は私”』

唇が震える。

答えを聞いたイズミは黒瞳を大きく見開いて固まっていた。あまりにも答えが簡潔過ぎたのかもしれない。もっと理論的に答えた方が良かったのだろうか。呆れて言葉も出ないのかもしれない。

半分パニックになっていた中、そんなAの様子を制止したのは大口を開いて笑っているイズミだった。

「いやぁ意外だった。もっとつらつらと説明し始めるかと」

『えっ？え？』