【鋼の錬金術師】三兄弟の錬金術師 Ⅲ (ページ23)

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「イズミさんっていい人っぽいな！」

いつの間にか裸足になり足首まで透明な水に浸かっていたエドがそうアルとAに笑いかけた。Aはというと、その言葉を聞いて『本当かなぁ』と首を傾げながら指先で湖の波を弄んでいる。

「おっ来たねイズミちゃん。舟の用意はできてるぜ」

「ごめんね無理言って」

時間を持て余していたそんな時、３人が湖で遊んでいるのをよそに、イズミがなにやら漁夫と親しげにやり取りをしている事に気が付いた。

「エド！アル！」

　
話が一段落着いたのか、イズミはA以外の子供の名前を呼ぶと、漁夫が用意したであろう舟に有無を言わさずエドとアルを乗せた。なぜか呼ばれなかったAは混乱している様子で浜辺をウロウロとしている。

舟に乗らなかったAとシグの姿が徐々に遠のいていく。周りの景色が湖の青で覆われていく中、そんな状況にアルが特に混乱している様だった。

「あの、姉さんとシグさんは行かないんですか？せっかくの遊覧船なのに…」

「遊覧？」

アルの疑問に、イズミはあくどい笑みを口元に浮かべる。舟を逞しい腕で漕いでいた漁夫が特にアルの言葉を聞いて心底愉快そうに笑っていた。
二人の様子の意味が分からず、エドとアルは困惑気味に首を傾げる。

「あの…この舟ってどこに行くんですか？」

「ほら、湖の真ん中にあるでしょう」

イズミが指を指した方向には、異様な存在感を放つ孤島が浮かんでいる。暴力的なまでの緑が生い茂る島――――イズミはその孤島を“ヨック島”と言った。

その島には十数分もせずに辿り着いた。エドとアルは島の地面を踏みしめると、その自然の広大さに驚嘆する。見渡す限り木、草、木、草――――

「野生の王国―――」

「はい、これ持って」

立ち尽くしていたエド達に突然イズミが声を掛ける。振り返ったエドにイズミは重みのある何かを投げ渡すと、満面の笑みで「ここね、無人島だから」となんの前触れも無しに言った。

「電気無し、井戸無し、雨をしのぐ家も無し。猛獣は多分いない」

人当たりの良さそうなやんわりとした笑みを貼り付けながら、イズミは淡々とこの島の現状を語りだす。人差し指を立てながらイズミは特徴的なドレッドヘアを揺らすと、

「この島で一ヶ月、あんた達２人だけで生きのびなさい」

―――まだ年端も行かぬ少年達に、イズミはとんでもない事を言い渡した。