【鋼の錬金術師】三兄弟の錬金術師 Ⅲ (ページ3)

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驚いてその音が聞こえた方向を見ると、そこには床に尻を着き驚愕の眼差しをウィンリィへ向けているドミニクさんの姿があった。若干怯えが滲む表情を向けている彼の額にはいくつもの玉のような汗が流れ出ている。
座り込んだ状態で壊れた人形のように顔を上げたドミニクさんは、ウィンリィを凝視しながらゆっくりと口を開いた。

「リゼンブールの………ピ……ピナコ…………？」

「？はい。ピナコ・ロックベルはあたしの祖母ですけど…」

瞬間、ものすごい速さでドミニクさんが後退った。その勢いで大きな音を立てながら壁にぶつかる。
わなわなと自身の顎にある古傷に触れながら震える彼の尋常ではない様子に、一部始終を見ていた私達は呆然と立ち尽くした。

「ピナコ・ロックベルの孫……」

「あの…ばっちゃんと何か…「訊くな！！古傷が裂ける！！」

ウィンリィが質問しようとした途端、噛みつくようにその言葉を遮った。頭を抱えて呻くドミニクさんは、ひどいトラウマでも掘り返されたのかと感じてしまうくらいに怯えきっている。

「思い出すもおぞましい…あのリゼンブールの女豹めぇぇぇぇ……！！

＿＿＿＿＿＿…とにかく！俺は弟子はとらねぇし、あの女の孫と分かったら余計おっかなくて……いやいや」

少し取り乱してしまったドミニクさんだったが、ひとつゴホンと咳払いをし、ウィンリィの頭へ手を乗せた。

「ま、どうしても修行してえってーならふもとの腕のいい技師を紹介してやるからそこに行け」

「…たまにお仕事を見学に来てもいいですか？」

「けっ、ジャマするなら来るんじゃねぇ」

冷たくそう吐き捨てたドミニクさんだったが、ポリポリと頭を掻いて立ち止まり、背を向けた状態で一言、

「…ただし、孫の顔を見にたまーになら来るがいいさ。そっちの手癖の悪いはねっかえりも改心したら一緒に来てもいいぞ」

顔を見せずにポツリと言った。
素直じゃないな、と思いながらも嬉しそうなウィンリィとパニーニャを見て思わず顔が綻ぶ。そんな皆をほわほわとした気持ちで見守っていると、パニーニャが何かを思い出したようにこちらへ歩いてきた。俯き気味で手を弄りながら歩み寄るパニーニャ。きっと私に言いたい事でもあるのだろう。

「あ、あの…眼帯のねーちゃん。上着の件なんだけどさ、あたしちゃんと働いて弁償するよ。今すぐは買えないけど…でも、必ず弁償するから！」

『パニーニャ……いや、もう気にしないでいいよ。働いて貯めたお金は機械鎧の返済に使いな。上着は縫えばまた使えるし』

「でも…」