【鋼の錬金術師】三兄弟の錬金術師 Ⅲ (ページ19)

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音の発生源は彼女の手のひら。

黒髪の女性は、手のひらを合わせると、そのまま両手を地面に叩きつけるように置いた。

「!!」

瞬間、地鳴りのような音と揺れと共に、堤防近くの土面が次々と隆起するのが見えた。土壁は付近の土面を吸い上げるように抉り取り、それを糧に更に大きな壁を構築していく。

決壊しかけていた堤防はあっという間に補強され、村人達は驚愕の眼差しを彼女へ向けるばかりだ。

「よし、これでしばらくは持つでしょう」

女性は折っていた膝を立て、手のひらについた泥を叩き落とす。すると、そんなずぶ濡れの彼女を見兼ねてか、屈強な大男が傘を片手に女性の隣へそっと近付いた。身内か何かだろうか。

「信じられねぇ…こんなバカでかいものを一瞬で……」

「あんた何者だ」

村人達がそれぞれの反応を見せる中、その中の一人がそう彼女へ問いかけた。その問いを受けた彼女はニッコリと口角を上げると、

「通りすがりの主婦です」

と、一言。
その言葉を発した瞬間、彼女は何故か吐血して村人達に運ばれて行ってしまったが、エドとアルは未だに彼女の芸当に驚きっぱなしだった。

あの人なら、この行き詰まりを解消してくれるだろうか。

エドとアルは顔を見合わせると、決意を決めた表情で小さく頷く。

＿＿＿＿ただ一人、そんな二人の様子をただ傍観している少女を残して。