【鋼の錬金術師】三兄弟の錬金術師 Ⅲ (ページ18)

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「オレとAとアルと母さんと、また楽しく暮らせるなら母さんだって喜んでくれるよ」

「…ねぇ、やっぱりボク達だけの知識じゃ無理だよ……父さんがいれば錬金術を教えてくれたかな」

アルの自信なさげな弱々しい言葉に、無情にもエドは刺々しい態度で寝返りをうった。

「あいつの話はするな！勝手に出てって母さんを泣かせて！母さんは女手ひとつで苦労してオレ達を育てて病気になって！そんな目に遭わせといてあいつは葬式にも帰って来やしない！」

「……でも、やっぱり独学じゃ限界があるよ」

エドのぶっきらぼうな言葉に、それでもアルは引こうとしない。事実、アルの言う通りなのだ。

いくらこの年で錬金術が理解出来る知能があろうとも、人間を造る複雑すぎる錬成陣を構築する事は無理がある。仮に可能だったとしても、構築式に辿り着くまで独学では何十年かかるのだろうか。

エドとアルに今必要なのは、錬金術のスキルを上げる為の方法。いわゆる、“師”が必要だ。

しかし、この村にエドとアル以上に錬金術が出来る者は存在しない。いるとなれば郊外へ出なければならなくなる。

＿＿＿そんな、錬金術に行き詰まっていたある日の事だった。

その日は今までに無いくらいの豪雨に見舞われていた。増水した川の様子を見に来ていた村人達は、必死に堤防の決壊を防ごうと尽力している。

しかし、そんな村人達の尽力も虚しく、堤防は決壊寸前だ。村人達と同様に川の様子を見に来ていたエド達は、病むを八の字に曲げて心配そうに現状を伺っている。

『…もう避難した方がいいんじゃ…』

そう呟いたAの手が、繋いでいたエドとアルの手をぎゅっと握りしめる。直後、川の近くで立ち尽くしていた私達を見かねてか、村人の一人が慌てた様子でこちらに駆け寄ってきた。

「こんな所で何してるんだ！早く逃げなさい!!」

「兄さん！姉さん！」

「うっ…うん」

『早く行こう！』

＿＿そう、Aがエドとアルの手を引こうとしたその時だった。

「えっ……おい、あんた…」

派手に濡れた黒髪をドレッドヘアで結い上げた女性が、突如として決壊寸前の堤防へと堂々と歩み寄って行ったのだ。

「危ないから離れててください」

「そりゃこっちのセリフだ!!」

屈強な村人達よりも遥かに細身の身体の女性なのにも関わらず、彼女は一体何を言っているのだろうか。しかし、その女性には確かな自信がある様で、決壊寸前のダムを前にしても表情ひとつ崩そうとしない。

＿＿＿辺りに、パンッと乾いた音が鳴り響いた。