【鋼の錬金術師】三兄弟の錬金術師 Ⅲ (ページ11)

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「おまえ達ひょっとして

あれを見たのか？」

＿＿＿＿。

一瞬の静寂。だが、私にとってその一瞬の静寂は、とても数秒とは思えないほど長く長く感じた。

果てしなく真っ白な空間。

その空間の中に佇む漆黒の大扉。

そして頭が割れる程の情報量。

師匠が言っている“あれ”というのは、そう、つまり“禁忌”についてだ。

だってそうだろう？私達の錬成を見て「あれを見たのか」と質問する人間は、私達と同じく禁忌を侵した者以外にありえない。

「見たんだろう？」

探るような師匠の低い声が耳を刺す。
すると、この空気に耐えられなかったのか、私よりも先にエドが口を開いた。

「………見ました」

「さすがはその年で国家資格を取る程の天才……って事か」

「…天才なんかじゃありません。オレはあれ(・・)を見たから……」

自分の地雷に踏み入られた為なのか、エドの声がいつにも増して弱々しい。それまで様子を傍観していたアルは、私達が何の話で揉めているのかさえ理解していないようだ。

＿＿そして、アルから目を逸らした瞬間、ふとエドと視線が交差した。

「それに、Aに至っては巻き込まれたも同然で………」

『っ兄さ＿＿』

＿＿＿そう、兄を呼ぼうとした瞬間、遠くから師匠の名前を声高々に叫ぶ子供の声が響き渡った。

「イズミせんせー！」

数人分の軽い足音がパタパタとこちらに向かってくるのが聞こえる。音につられてその方向を見ると、いかにもやんちゃそうな男の子達が師匠に駆け寄っていく様子が伺えた。

その男の子の中の1人が、手に抱えていた玩具を師匠へ押し付けるように見せる。

「ボクの汽車が壊れちゃった。直してよ！」

「ん、おいで。家の中に道具があるから」

師匠はそう言うと、私達の話を中断し子供たちを連れて家の中へと入って行った。
思いもよらない乱入者に、私とエドは呆気に取られ思わず顔を見合わせる。家の中からは子供たちの元気な話し声と師匠のいつもより柔らかい声が飛び交っていた。

扉のすぐ側で師匠が出てくるまで待っていると、師匠よりも先に、男の子達が汽車の玩具を片手に家の中から飛び出してきた。

「壊したらまた来るねー！」

「だから壊すなっつの!!」

師匠の怒号を背に、子供たちの騒がしい声が遠ざかっていく。さて、そろそろ話の続きをされるのだろうか。

「イズミせんせい…」

そう思い身構えていると、別の出入口からまたもや師匠を呼ぶ子供の声が耳に入った。