【鋼の錬金術師】三兄弟の錬金術師 Ⅲ (ページ2)

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「いやぁ良かった良かった。一時はどうなる事かと思ったが」

「母子共に体調良好。産後の処置も適切だね」

医者はサテラさんの脈を右手首で測りながら、感心した様子でうんうんと頷いている。

「初産の立ち合いなんて大人でもびびっちゃうのに大したものだ」

「いえ！もう必死で何がなんだか…」

手をブンブンと激しく振るウィンリィ。珍しく謙虚なウィンリィに少し驚いたが、医者に褒められている彼女を見て私は微笑ましいと同時に鼻が高かった。身内が褒められているとこっちも嬉しくなってしまう。
そう思いながらウィンリィに生暖かい視線を向けていると真っ赤な耳でキッと睨まれてしまった。照れ隠しだな。

「予定日通りに生まれてくれればみんなに迷惑かけずに済んだのにこの子ったら…」

「兄さんみたいなせっかちな人がお腹に触ったから早く生まれて来ちゃったんだきっと」

「オレのせい？！」

『やーい兄さんのおせっかちー』

「なんだと！」

「ははは、無事に生まれたんだから結果オーライってやつだよ」

ほんわかとした空気で姉弟揃って兄をからかっていると、それまで孫を可愛がっていたドミニクさんが神妙な面持ちでウィンリィへ向き直った。その真面目な空気に気が付いたウィンリィは、私達からドミニクさんへ目を逸らす。

「…本当に皆には…特に嬢ちゃんには世話になった」

ドミニクさんはそう一言いうと、彼は椅子に腰かけた状態で膝に両手をつき、ウィンリィへ深々と頭を下げた。

「感謝する。ありがとう…！！」

「あは、そんなにかしこまられたら照れちゃう」

再び頬を染めながら照れるウィンリィ。そんな彼女をパニーニャは肘でツンツン突き茶化している。そんな和んだ様子の中、一人あくどい笑みを浮かべている人物がいた。
ニヤニヤとしているその人物＿＿＿エドは、そろりそろりとドミニクさんへすり寄っていく。

「どうでゲス社長…機嫌のよろしいところでひとつ弟子などとってみては…」

「却下」

おおっと、即答。

「出産では世話になったがそれとこれとは話が別だ。俺は弟子はとらん。それに嬢ちゃんにも家で待ってる家族がいるだろ。若ぇ女の子がかけさせちゃいけねえ」

「……」

「ぬー…取り付く島もなしかよ！」

「そうだね。リゼンブールにピナコばっちゃん一人になっちゃうもんね…」

――アルがそう言った次の瞬間、何かが崩れ落ちる音が辺りに響いた。