【鋼の錬金術師】三兄弟の錬金術師 Ⅲ (ページ1)

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「ふぎゃあっふぎゃあっ」

『＿＿＿ぁ』

生まれた。

リドルさんの手のひらには、両手より少し大きめの赤ん坊が抱かれている。
ところどころ肌に血液が付着してはいたが、とてもとても元気な男の子だった。そう、出産は無事完遂出来たのだ。

そう理解した瞬間、緊張の糸がプツンと切れ、私は手に持っていたタオルを床に落としながらその場にへたり込んだ。自然と涙が頬を伝う。出産を無事終えられた事による安堵からなのか、はたまた生命の誕生による感涙なのかは分からない。

とにかく、無事に生まれた赤子と笑っているサテラさんを見て、私はひどく安心した。

「姉さん立てる？」

『ああ…アル』

いつの間にか部屋に入ってきていたアルを見て、私はふにゃっと笑う。アルが差し出してきた手を掴み、私は重い腰を上げた。周りを見ると、赤ん坊の誕生に興奮しているエドや床に座り込むウィンリィ、扉の外ではぐったりと倒れこんでいるパニーニャなど、それぞれが色々な反応を示している。

アルに支えられながら部屋の外へ出た私は、おもむろに窓の外を見ると僅かに空が明るくなっており、それはそれは長い時間を出産に費やした事を改めて実感した。何をするでもなくぼーっと外を眺めていると、遠くから何かが迫ってきている異に気が付く。

よく目を凝らして見てみると、それは馬に医者を乗せたドミニクさんだった。そういえば橋の錬成に失敗した後、橋とは反対方向の山一つ越えた街から医者を連れてくるって言ってたっけな。家の中へ焦りに満ちた形相で医者と共に飛び込んできたドミニクさんは、ぐったりとしている私達子供組には目もくれず、一目散にサテラさんのいる部屋へ駆けていった。

「生まれた……のか」

目を大きく開きながらドミニクさんがそう呟く。サテラさんの腕の中で穏やかに横たわっている赤ん坊に恐る恐る近づいたドミニクさん＿＿＿＿＿＿＿瞬間、貫禄のあった顔が破顔した。

「おじいちゃんですよ～～～～～♡」

小さな赤ん坊に対して声のトーンを上げながら頬を突くドミニクさんの姿はもはやその辺の老人と変わらない。あまりの彼の変わりように、私はつい呆気に取られてしまった。

「おい孫だよ俺の孫！か～わいいなぁ」

「(じじ馬鹿炸裂)」

『(貫禄仕事しろ)』

「(キャラ違う…)」

なぜだろう。不思議と今なら兄と弟の考えが手に取るように分かってしまう。
まあそれはそうとサテラさんと赤ん坊は無事、リドルさんもドミニクさんも幸せそうだし結果オーライか。