【鋼の錬金術師】三兄弟の錬金術師 Ⅱ (ページ9)

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「ああ！はい、覚えてます。活版印刷ばかりの書物の中でめずらしく手書きで、しかもジャンル外の書架に乱暴に突っ込んであったのでよく覚えてます」

「＿＿＿＿本当に分館にあったんだ…」

『…て事は』

「やっぱり丸焼けかよ……」

マルコー氏の研究書が本当に存在していた事を知って少し喜んでしまったが、その喜びは一瞬にして崩れ去った。
再びよろよろとした足取りになった私達は、シェスカさんに軽く頭を下げて家を出ようと扉へ向かう。

「あ…あの、その研究書を読みたかったんですか？」

「そうだけど今となっては知る術も無しだ……」

エドはそう言ってドアノブに手を掛けようとすると、シェスカさんが一言＿＿＿＿

「私、中身全部覚えてますけど」

とんでもない事を言い出した。

信じられない彼女の言葉に一瞬頭が真っ白になる。

「『「は？！」』」

次の瞬間、私達は食いつくようにシェスカさんに詰め寄った。

「いえ、だから…一度読んだ本の内容は全部覚えてます。一字一句まちがえず！時間かかりますけど複写しましょうか？」

彼女の手をがしっと掴み私達は文字通り狂喜乱舞。
エドはシェスカさんに感謝の言葉を述べた。

「ありがとう本の虫！！」

「虫ですか…」

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
＿＿＿＿＿＿＿＿＿

「いやぁ、すみません。かなりの量だったもので写すのに五日もかかってしまいました」

机の上に大量の書物を乗せながらシェスカさんは微笑んだ。
あの量を本当に複写してしまった彼女に開いた口が塞がらない。

「……本当にやった…」

『すご……』

「世の中にはすげー人がいるもんだなぁA、アル……」

近付いてよく見ると、細かい文字な上に改めて量が多い事を実感させられた。燃えた蔵書が復元した事にわくわくしているのが自分でもよく分かる。

『こんなに量があったんじゃ、これ持って逃亡は無理な訳だ』

「これ本当にマルコーさんの？」

「はい！まちがいなく＿＿＿＿＿＿＿

ティム・マルコー著の料理研究書、“今日の献立1000種”ですっ！！」

………

？

料理研究？献立？

呆気にとられたエドとアルと共にマルコー氏の研究書に手をつける。
ぺらぺらと捲りながら資料へ目を通す＿＿＿＿そういえば、錬金術は台所から発生したって言う人もいたような。

という事はこれは暗号？
ちらりとエドの方を見ると、彼も同じことを考えていたらしくニヤッと口角を上げていた。