【鋼の錬金術師】三兄弟の錬金術師 Ⅱ (ページ8)

今日:9 hit、昨日:125 hit、合計:15,670 hit

・ページ8

私達は慌てて家の中に入り込み、本当にいるのかすら怪しいシェスカさんを探索し始めた。
入り組んだ本の壁達に圧倒されながら、声を張り上げて必死に家の主の名を叫んだ。

「シェスカさーん！いらっしゃいませんかー？」

「おーい！」

『…本当に人住んでんのかな……住んでたとしてもこんな本の山に囲まれてたら危ないったらありゃしないな…』

と、フラグとも取れる発言をしていると、微かに女性のか細い声が耳を擽った気がした。
最初は気の所為だと思っていたが、徐々にハッキリと聞こえてくるその声にまさか、と嫌な考えが頭を過ぎる。

ちらりと隣を見るとアルも黙って固まっていることに気が付いた＿＿＿＿その時、

「たすけて〜〜〜……」

ハッキリと近くの本の山から女性の声が聞こえた。

『兄さん人っ！！』

「人が埋まってる！！」

「なんだって！？掘れ掘れ！！！」

どわあああ、と情けない声を上げながら少尉と軍曹も合わさった5人で本を掘り返していると、次第に奥からボサボサの茶髪が姿を覗かした。

本の山からのそのそと姿を現した茶髪の女性は着用していた眼鏡を整えると、八の字に眉を顰めながら私達へ頭を下げた。

「すみませんすみません！！うっかり本の山を崩してしまって…このまま死ぬかと思いました…ありがとうございます〜〜〜！！」

「………どーいたしまして…」

『＿＿＿＿えーと、あなたがシェスカさん？』

疲れきった兄に代わって茶髪の女性に質問すると、「はい、私がシェスカです」と礼儀正しい答えが返ってきた。

「私、本が大好きなもので分館に就職が決まった時はすごく嬉しかったんですが…でも本が好きすぎてその……」

言葉を濁したシェスカさんは人差し指を眉間に当てながら不甲斐なさそうに話を続ける。

「仕事中だという事を忘れて本ばかり読んでいたものでクビになってしまいまして」

『あ、分館燃えたからじゃないんだ……』

「はい…病気の母をもっといい病院に入れてあげたいから働かなくちゃならないんですけど…

ああ〜〜〜本当に私ってば本を読む以外は何をやっても鈍くさくてどこに行っても仕事もらえなくて……そうよ、ダメ人間だわ社会のクズなのよう……」

めそめそと顔を覆う彼女の対応に困っていると、その空気を遮るようにエドが口を開いた。

「あー…ちょっと訊きたいんだけどさ、ティム・マルコー名義の研究書に心当たりあるかな」

シェスカさんは少しの間マルコー氏の名前を復唱しながら首を傾げると、ぱっとした表情で掌を合わせた。