【鋼の錬金術師】三兄弟の錬金術師 Ⅱ (ページ48)

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その音は床に散らばっている皿から放たれた音だったらしい。散らばった破片の近くには、苦しそうに腹を抱えるサテラさんの姿が。

『サテラさん？！サテラさん大丈夫ですか？！』

「うぅ……」

慌てて駆け寄り彼女の肩を抱き起こす。サテラさんの額にはいくつもの玉の汗が滲んでいた。
眉間に皺を寄せて荒く呼吸するサテラさんの様子は明らかに異常だ。ハッハッと短く息をする彼女の両腕は自身の大きな腹に回されたままだった。

もしかして＿＿＿＿＿

『まさか………じ、陣痛、ですか？』

私の問いに、サテラさんは辛そうに首を縦に振った。

瞬間、全身の血の気が引いた。

どうすればどうすればどすれば――！！苦しそうなサテラさんを前にするとなかなか思考がまとまらない。私はサテラさんを支えるばかりで、頭は錯乱した座り込んだままだ。彼女の肩を抱きながら半泣き状態で震えていると、突然部屋の扉が開いた。

「えっ、Aとサテラさん？！一体何があったの？！」

『ぁ…ウィンリィ…サテラさんが、サテラさんが陣痛！陣痛が来て！！』

「はぁ？！陣痛？！うそ…大変、皆を呼んでこないと！」

部屋に入ってきたウィンリィは瞬時に踵を返した。ウィンリィの向かった方向からリドルさんやパニーニャの叫び声が聞こえてくる。次の瞬間、サテラさんの名前を叫びながらリドルさんやパニーニャ、エドやアルにドミニクさんまで部屋に飛び込んできた。

「どうした大丈夫か？！」

私はリドルさんにサテラさんの肩を貸し、訳も分からず彼女の腰を擦る。リドルさんの問いに、サテラさんはもごもごと口を開いた。

「うま……」

「馬？！」

「……………生まれる」

「「「「えぇー－－－－－－っ！？！？！？！」」」」

一斉に全員が叫んだ。
どたばたと皆が皆混乱し走り回る。一方私は涙目になりながらサテラさんの腰をまだ擦っていた。
先程までの貫禄のある顔はどこへやら、ドミニクさんは焦りを滲ませた表情でコートを羽織り始める。

「あっ…ああ、しかしこの雨の中町の病院まで連れてく訳にはいかんな。俺がひとっ走り行って医者を連れてこよう」

ドミニクさんはそう言うと、目にもとまらぬ速さで馬に乗り雨の中を走り去っていった。これでもう安心―――かと思われた。

「橋が……」

絶望が滲んだ表情で、ドミニクさんはそう告げる。
すぐさまエドやアルと共に橋へ向かい錬成を試みた私達だったが、悲惨な事にそれは失敗に終わった。