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「けっこう山の中まで歩くから身軽な方がいいよ」
「じゃあ荷物は宿に預けといた方がいいわね」
「聞けーーーー！！！」
「だめだ兄さん、ああなったらウィンリィは止まんないよ…」
***
―――と、なんやかんやあり、私達は整備師へ会いに行くため岩が林立する山を登っていた。正直日差しが強くて焼け死にそうなくらい暑い。
「…本当に辺鄙な所に住んでるのねその整備師さん……」
「うん。機械鎧に使う良質な鉱石が出るとかでこんな山奥に工房を持ってるんだ」
暑さでバテている私達とは裏腹に、パニーニャは慣れた足取りでさくさくと歩いて行く。
「あと単に人嫌いって言うか無愛想だから街中には住みたくないらしいよ」
「それよりもオレの時計！早く返せよ！」
『私の上着も弁償しろー！』
「整備師の所まで案内したらスリの件は見逃すって約束だからね。約束を破らないように人質♡」
「…その約束したのオレじゃねえっつーの…………」
『上着は？』
「上着はまあ……そのうち？」
『そのうち？！』
目を合わせずに答えるパニーニャに、私の中での彼女への不信感は募るばかりだ。この子絶対踏み倒す気だろ。
「見えて来たよ！あれ！」
いっその事今ここで身ぐるみを剥いでやろうかとさえ考えていた時、おもむろにパニーニャは目の前を指差した。指が差している方向へ視線を向ければ、そこには岩肌に背を向けている小さな工房が建っている。
どこか嬉しそうに工房へ駆け出したパニーニャは、なんの躊躇もなく扉を開けた。
「こんちわっ！」
「パニーニャ！おまえこんな山奥までこまめによく来るなぁ」
パニーニャの後ろへ続いて中を覗くと、頭にタオルを巻いた眼鏡の男性と目が合った。男性は一瞬目を見開くと、顔をにっこりと綻ばせ会釈する。
「やあ、可愛らしいお客さんだね」
『ど、どうも』
「今日はお客さんを沢山連れて来たよ」
男性は手元の作業を中断して椅子から立ち上がり、「機械鎧の注文かな…」とパニーニャに連れられて外へ出た。
「―――……ってうわでっか！！ちっさ！！」
……まあ、初見の人はそうなるよな。
男性はエドとアルを交互に見ながらそう叫ぶ。案の定「ちっさ」と失言した彼へ飛び掛りそうになったエドを、アルは羽交い締めにして拘束していた。
そんなエドには目もくれず、パニーニャは平然とウィンリィの紹介を始めている。
「この子は整備師のウィンリィ。ドミニクさんの機械鎧に興味があるんだって」
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作者名：はちまき | 作成日時：2022年2月20日 1時
