第10話 賢者の石 ページ5
エドは頭をかいて一拍置くと軽く腕を上げ
「おう！」
と、背を向けた。つられて私とアルもウィンリィへ手を振る。
それを見たウィンリィは、満足そうに私達の背中に向けて笑顔を贈った。
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「早くしろよA、アル！」
「兄さんそんなに急がなくても……」
『寝起きで走らせんな！！！』
「うむ、図書館は逃げる事はないぞ」
「いいから早く！」
たくさんの人々と汽車が行き交う駅の構内。
私達はリゼンブールから国の首都、セントラルへ戻ってきていた。
マルコー氏から賢者の石についての情報を得ていたエドは、待ちきれないと言った様子で地面を蹴る。
そんな兄の背中を早足で追っていた私達だったが、駅を出ようとした瞬間、少佐の元に2人の軍人が駆け寄ってきた。
「アームストロング少佐、お迎えに上がりました」
2人の軍人のうち、短髪の女性が礼儀正しく少佐へ敬礼を贈った。もう1人の濃い金髪の男性もつられて敬礼をする。
「うむ、ごくろうロス少尉、ブロッシュ軍曹」
「おっ、こちらが鋼の錬金術師殿でありますか」
金髪の軍人＿＿＿ブロッシュ軍曹があきらかに“アル”を見ながらそう言った。ロス少尉もそう思ったのか、アルへ向かって敬礼する。
「マリア・ロスです。お会いできて光栄です！」
「デニー・ブロッシュです。いやぁ、ふたつ名通りの出で立ち！貫禄ですな！」
エドの怒りが徐々に膨らんでいくのを感じて2人に真実を教えようと行動しようとした時にはもう遅く、アルはエドの方向を指差し2人へ“自分は違う”と示した。
「え？」
「あっちのちっこいの？」
顔が真っ赤になるのを合図にエドは2人へ飛び掛かろうとしたが、その展開をとっくに予測していた私の手によって阻止された。勘違いをしていた事に気が付いた2人の軍人は、顔からは汗を滲みだしながら謝罪を始めた。
その一部始終を見ていた少佐は深く息を着くとゆっくりと口を開く。
「＿＿＿では、我輩はこのまま中央司令部に報告に赴くゆえ」
「え？何？ここでお別れ？おつかれさん残念だなぁバイバイ！！」
先程までの憤怒はどこえやら。エドは少佐の言葉を聞くと、大層機嫌が良さそうに明るく別れを告げる。護衛が着いているのがそんなに嫌だったのか……と少し引いていると、少佐は涙を流しながらエドに抱き着いた。
「我輩も残念だ！！まっこと楽しい旅であったぞ！！また後ほど会おう！！」
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作者名：はちまき | 作成日時：2022年2月20日 1時
