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―――ゴォッ、と汽車が大きな音を立てながら蒸気を吹いた。
ヒューズ一家や少佐、少尉と軍曹に見送られた私達兄弟は、ウィンリィと共に師匠の元へ向かっている。相席に4人で座り、私はアルの隣で汽車の揺れに身を任せていた。
「なんでまた急に師匠の所へ行こうなんて思ったの？」
窓に肘を着いているエドに、ウィンリィはふと質問を投げ掛ける。右頬を掌で支えながら、エドは不機嫌そうに眉を顰めた。
「理由はふたつ、ここ最近どうにも負けっぱなしでよ。とにかく強くなりたいと思ったのがひとつ」
『確かに最近の通院回数凄いもんね』
「はぁ？ケンカに強くなりたくて行くの？あんたらケンカ馬鹿？」
呆れたようにウィンリィはエドと私を交互に見つめて頭を抱えた。まあ、傍から見るとそう思われても仕方が無いだろう。
「ばっきゃろー！そんな単純なもんじゃねぇや！！」
心外だ、とでも言うかのようにエドは声を荒らげる。
「なんて言うかこう……ケンカだけじゃなくて、中身もって言うか……なあ！」
「そうそう！」
『言葉ではちょいと言い表しにくいよな』
共感を求めるように話題を投げたエドに、アルと私は頷いて肯定した。ウィンリィはどこか引っかかるような表情はしながらも、納得する様に息を吐く。
「………で、ふたつめは？」
「人体錬成について師匠に訊く事！」
『私達、師匠の元で修行したって言っても賢者の石や人体錬成については教えてもらってないんだよ』
「そう、賢者の石が色々と物騒な事になってるからさ。ここは思い切ってストレートに元の身体に戻る方法を訊いてみようかと思ってんだ」
決意をした目でエドはハッキリとそう言いきった。
賢者の石の情報が次々と顔を出してきている今、何者かに妨害されない為にもなりふり構わず収集しなければならない。
その相手が“あの”師匠だったとしても………
「師匠に訊いて………訊い、て……」
エドの声が徐々にしりすぼみになっていくにつれ、私の脳裏に師匠との思い出が蘇り始めた。
何度も死を覚悟したハード過ぎる師匠の修行が過ぎる度、血の気が引いていく感覚が身体をなぞる。
「…短い人生だったなぁ、A、アル〜〜〜…」
『最後にばっちゃんのご飯食べたかった…』
「せめて彼女だけでも作っておきたかったよ兄さん……！！」
あの師匠の事だ。人体錬成をしたなんてバレたら半殺しで済むとは思えない。
涙しながら未練を語る三兄弟に、ウィンリィは苦笑いを零した。
「あ、そうだ！」
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作者名：はちまき | 作成日時：2022年2月20日 1時
