・ ページ34
大総統は突然わははは、と笑い出すと、私の肩をバシバシ叩き出した。
「そう警戒するな妹君、取って食いやしないのだからな」
『……』
「私がここまで足を運んだのは見舞いというだけでは無い―――君を国家錬金術師の資格を取らないか、と勧誘しに来たのだよ」
隻眼をギラりとさせながら、大総統は私をじっと見つめる。―――私を、国家錬金術師に？
「君の活躍は色々な所から聞いているよ。その度に“なぜあんな逸材が国家錬金術師では無いのか”と疑問が上がり始めてね？どうだ、度の資金確保も兼ねて資格を取る気は無いかね」
ニッコリと笑いながら手を差し伸べる大総統。……確かに、3人の旅の資金をエドが全て負担するというのは高収入であっても少しばかり厳しいだろう。
私も負担を少しでも軽くしようと、行先の街でこっそり日雇いの仕事をしていたりするが、やはり心もとないのは事実だ。だったらいっそ―――
***
「針のむしろに座るのはオレだけで十分だ」
***
―――炭鉱の街でのエドの一言が頭を過ぎった。
『―――お誘いは有難いです。ですが大総統、私はその手を取ることはできません』
手を差し出す大総統の目の前で、私は深く頭を下げた。今、大総統はどんな顔をしているのだろう。もしかしたら今日が私の命日かもしれない、と背中に冷たいものが流れたがそれは杞憂に終わる事になる。
「……そうか、残念だが妹君がそうしたいと言うのなら構わん。だが、もしも心変わりしたら何時でも言ってくれたまえ」
小刻みに震える私を他所に、大総統はなんとも柔らかい声色でそう言うと、そのまま病室を立ち去った。扉がバタンと閉まる音と共に、緊張の糸がプツンと切れる。
『し、死ぬかと思った…』
さすがは国のトップに立つ男と言ったところか。圧が半端ではない。ほっとしているのも束の間、次はドタドタとした足音と共に、扉が破られる勢いで開いた。
「大丈夫かA？！」
「姉さん！」
病室に飛び込んできたのは焦りの感情を浮かべたエドとアルだった。話を聞くと、最初にエドの病室へ来た大総統が、次は私に話があるとか言ってこの病室へ行ってしまった為とても心配だったそう。
相手が相手だったのもあり、軍人組も含め皆何も言えなかったそう。
「とにかく無事なら良かった……あ、そうだA。話は変わるんだが、明後日辺りにダブリス行くから準備しとけよ」
『ダブリス…なんでまた………―――！ま、まさか…』
「ああ、そうだ…師匠の所へ行く」
***
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 54人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はちまき | 作成日時：2022年2月20日 1時
