【鋼の錬金術師】三兄弟の錬金術師 Ⅱ (ページ33)

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「オレは！ケンカも心ももっと強くなるぞ！」

鋼の右腕を天へ突き出しながらエドは言った。
珍しく頼もしい兄だ、と思わず口元が緩んでしまう。私はエドやアルと同じように地面へ寝そべり、快晴の空を仰いだ。

「うん――――もっともっと、強くなろう」

―――エドが掲げている右腕に、私とアルは拳をぶつけた。

***

―――私達の様子を見に来たであろうウィンリィや中佐と共に、私達はそれぞれの病室へと大人しく戻って行った。
エドは軍人組と話があると言って、隣の病室では難しそうな話が長い間繰り広げられている。

『……いって〜』

一方、私はと言うと、屋上での激しい運動のせいで腹の傷が悲鳴を上げていた為、痛みでもがいている最中だ。
重傷の妹にも容赦なく飛び掛ってきた兄を恨みつつ、私は痛み止めを服用する。

幸い傷は開いてはいなかったようだが、その代わり主治医にこっぴどく叱られてしまった。

『早く話終わんねーかな…』

兄弟に囲まれて過ごしていたせいで、1人だけの病室は中々堪える。アルもあっちの話に参加しているため今私はぼっち状態だ。

―――痛み止めが効き始めた頃だろうか。

ベッドに横たわり窓の外を眺めていると、病室の扉がコンコンと叩かれた。
エド達だろうか？そろそろ隣に突撃しようと思っていた所だったから丁度いい、と内心思いながら私は扉の方へ身体を向ける。

『どうぞ』

「失礼するよ」

？どこかで聞いた事のある声だ。しかしこの声色は隣にいる人達のものでは無い。
ゆっくりと扉を開いて病室に入ってきたのは、左眼に眼帯を装着した初老の男性―――――――

『……キング・ブラッドレイ大総統？！？！』

「まあまあ落ち着きなさい。大声を出すと腹の傷に障るだろう」

まあまあ、と手をヒラヒラさせる大総統。
いやいやいや、驚かない方がおかしいだろ。目の前に国のトップがいるんだぞ？

オロオロと困惑しているのを他所に、大総統は私の気も知れないでズカズカと距離を縮めてくる。下手な事は出来ない、と緊張で心臓がバクバクとエンジン並みの音を立て始めた。

『あー、えっと、大総統閣下が何故ここに…？』

「隣の部屋でも同じ事を部下に聞かれたな。何、別に大したことは無い。鋼の錬金術師の妹の見舞いに来た、それだけだ」

『はぁ…』

鋼の錬金術師の親族だから―――それだけの理由でわざわざ大総統から見舞いになど来るのだろうか？
疑問が拭えないまま、警戒しながら大総統を見据えると、彼もその雰囲気を察知したのだろう。