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***
―――そんなドタバタした日の翌日。
少しだけ歩けるようになった私は、軽く院内を散策していた。まだ腹の傷はズキズキと痛むが、この調子なら直ぐにでも回復できるだろう。
左腕の傷跡を撫でながら、私は自分がいた病室まで戻ろうと歩みを進めていると、前から見覚えのある金髪が歩み寄ってくるのが見えた。
「あ、A！」
咄嗟に左腕の傷跡を上着で隠し、こちらへ駆け寄ってくるウィンリィへ笑顔を向ける。
『やあウィンリィ。兄さんのとこいくの？ほんとウィンリィ兄さんの事好きだね〜』
「ち、違うわよ！機械鎧の様子を見に来ただけで……」
『私はウィンリィがお義姉さんになったら嬉しいけどなー』
「おねっ…！何言ってんのよバカ！」
顔を真っ赤にしながら否定するウィンリィをからかいつつ、私達は談笑しながらエドがいる病室の前までやってきた。話し声を聞くに、中にアルもいる様子。
ドアノブに手をかけ、ウィンリィは私の代わりに扉を開いてくれた。そうして中に入ろうとした―――その時だった。
「ボクは好きでこんな身体になったんじゃない！！」
―――アルの怒声が室内にビリビリと響いた。
突然鳴り響いたアルの叫びに圧倒され、呆然とその場に立ち尽くす。
アルはワナワナと拳を握り締めながら悲痛な声を絞り出した。
「……好きで…こんな身体になったんじゃない………」
「あ……悪かったよ」
エドの表情は今までに無いほど弱々しくアルを見つめていた。
「……そうだよな、こうなったのもオレのせいだもんな…だから、一日でも早く元に戻してやりたいよ」
「本当に元の身体に戻れるって保証は？」
「絶対に戻してやるからオレを信じろよ！「“信じろ”って！！」
『…』
「この空っぽの身体で何を信じろって言うんだ……！！錬金術において人間は肉体と精神と霊魂の3つから成ると言うけど！それを実験で証明した人がいたかい！？」
今まで我慢していたものが決壊するような勢いで、アルはエドへ怒号をぶつける。
「“記憶”だって突き詰めればただの“情報”でしかない…人工的に構築する事も可能なはずだ」
『アル…？』
「お前、何言って……」
「…兄さん前にボクと姉さんには怖くて言えない事があるって言ったよね
それはもしかして、ボクの魂も記憶も本当は全部でっちあげた偽物だったって事じゃないのかい？」
―――あ。
私はふと、昨日のアルの様子を思い出した。何も言わず、ただ黙って私の手を握るアルの姿。
思い悩んでいた理由はこれだったんだ。
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作者名：はちまき | 作成日時：2022年2月20日 1時
