【鋼の錬金術師】三兄弟の錬金術師 Ⅱ (ページ28)

今日:34 hit、昨日:125 hit、合計:15,695 hit

・ページ28

『えっ、倒れてた時の私ってそんなえげつない感じだったの』

「そうよ」

病室の外から少尉がひょこっと顔を覗かせる。

「私と軍曹が研究所に着いた時、あなたお腹から大出血してたんだから…応急処置はしてあったみたいだけど、一歩間違えたらあの世行きだったのよ？」

顔に怒りを滲ませながら少尉は私をジトッと睨んだ。ご最も過ぎる言葉に、私はベッドの中で縮こまる事しか出来なかった。
相変わらずウィンリィはベッドに顔を埋めている。取り敢えず頭をぽんぽんしておいた。

少佐はずっと涙を流している。

『えっと、じゃあそろそろ皆解散し「ようエド！病室に女連れ込んで色ボケてるって？」

―――また騒がしい人が来てしまった…

中佐はさぞ楽しそうにエドを茶化している。一方エドは何度も弁解していたが、中佐の解釈が色ボケ方向から変わる事は無かった。
中佐はウィンリィと自己紹介をしあうと、私の方へくるりと向き直る。

「よお嬢ちゃん！丸2日寝込んでたって？災難だったな〜」

『はぁ…』

はっはっはと豪快に笑いながら、中佐はベッドをぽふぽふ叩く。横になっているままなのはどこか気恥しかったので、痛み止めが効いてきたのもあり私は取り敢えず上体を起こした。

「あ、そうそう。おまえさん達の様子を見に来た次いでに、スカーの件の情報も伝えに来たんだった。もうじき警戒が解除されそうだ」

「本当に？！やっとうっとーしい護衛から解放されるよ！」

嬉しそうににぱっと笑うエドとは裏腹に、当の護衛の少尉と軍曹はムスッと不機嫌そうに顔を歪めていた。

「私達がいなかったらどうなってたと思ってるのよ」

「え？護衛って…あんたらどんた危ない目にあってるのよ！」

護衛と言う単語に、何かと私達を気にかけてくれるウィンリィが案の定食いついた。エドはまずい、と思ったのか額に汗を浮かべながら言い訳をしている。もちろんのことながら、ウィンリィの尋問は私にも向いている。

「大した事ねーよ！」とそっぽを向くエドと、黙秘を貫く私。ウィンリィはその態度が心底不満だったのか、吐き捨てるように言った。

「そうね、あんたら兄弟は訊いたって言わないもんね」

『うっ…』

ウィンリィまでそっぽを向いてしまった。胸にどっしりと重たい物が溜まってくのを感じる。

ウィンリィは、エドの病室へ一旦戻り荷物を取りに行くと、「宿を探す」と言って病室から出ていこうとした―――が、何故か中佐の家に泊まることとなってしまい、ウィンリィは中佐に引き摺られながら病室を後にした。