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『なら私が目を覚ましたの伝えに行かないと……って言っても腹の傷が痛すぎて動けないんだよね。アル…悪いんだけどさ、私の代わりに兄さんに伝えてくれない？』
「……うん、分かった」
アルはベッドに顔を埋めたまま、コクンと頷いた。―――しかし、アルの歯切れが悪い様に感じるのは気の所為だろうか？頷いても一向に部屋を出ようとしないし…
『アル？』
「……ごめんね、姉さん。もう少しここに居させて」
アルは近くにあった椅子を手繰り寄せると、それに腰掛けて私の手を握り始める。久しぶりに甘えてくるような行動をする弟に愛おしさを感じつつも、私の胸の内は心配の方が勝っていた。
『……もしかして、兄さんと何かあった？』
「え？」
アルがこの行為に走る原因は大体エド絡みだ。他にも、不安や悩みが積もっている時もアルは事ある毎に私へ身を寄せてくる。自分と1番存在が近い双子だから安心出来るのだろうか。
『なんかあったんでしょ。誰にも言わないからさ、吐き出してみなよ』
「…………今はいい、かな。うん、近い内に話すから。ありがとう姉さん」
アルは私の手をぎゅっと握り、鎧の奥に光る瞳を細めた。…何をそこまで思い悩んでいるのだろう。今のアルの様子じゃ気軽に聞くことさえ私は出来ない。
「じゃあそろそろ行くね。お大事に、姉さん」
アルは椅子から腰を上げ、握っていた私の手をゆっくり離した。バタン、と扉がしまった後は、少しの鉄臭さと静寂が病室を包む。
静かすぎる病室とは裏腹に、隣の病室が何やら騒がしくなっていた。
『……そう言えば、隣は兄さんの病室か』
動きたい。でも痛い。
何とか出来ないかと思考を巡らせていると、ベッドの隣にあった小さな机の上に紙袋が置いてある事に気が付いた。袋には、“痛み止め”の文字が。紙袋の中を漁ると、いくつかの錠剤が出てきた。
『これ飲めばいいのかな？』
2つほど錠剤を飲んでから、もう一度目を閉じる。薬が効くまで少し掛かるだろう。それまで体力温存のために寝ていよう――――
「A！！！」
「A起きたの？！」
「A・エルリック！！！」
――と、思ったがそれは叶いそうにないな。
病室の扉を破壊する勢いで入ってきたのは、エドとウィンリィと少佐、そして申し訳なさそうに後ろで縮こまるアルだった。
エドとウィンリィは私の方へ近付くと、ウィンリィの方は涙目で私を見つめている。
「やっと目を覚ましたのか…良かった……血溜まりで横たわってるお前を見た時は生きた心地しなかったぞ…」
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作者名：はちまき | 作成日時：2022年2月20日 1時
