第12話 「人間」の定義 ページ23
「“スライサー”の腕を買われて実験材料にされてな。今はここの番犬だ」
「……て事は、魂と鎧を仲立ちしてる印がどこかにあるんだな？」
「ふむ…全て説明する必要も無しか」
エドの問に48は素直に答えると、口元に付けていた白い布を外し、頭の鎧をパカッと開いた。案の定、そこには血印と、ついさっき私が付けた傷が覗いている。
「そう、私の頭部の血印…これを壊せばおまえらの勝ちだ。ついさっきの小娘の一突きには少し背筋を冷やしたがな」
「弱点を教えてくれるなんて親切なおっさんだな」
「ふはは、私は戦いに緊張感を求めるタイプなのでな」
鎧を元に戻しながら48は愉快そうに笑う。2人が話している内に私の脚のふらつきは治まっていた。これでようやく再起出来る。
「親切ついでにオレ達をこのまま見逃してくれたりしないかな〜…なんつってみたり」
―――エドの言葉に、48の鎧の向こうに無いはずの目がギラりと光ったような気がした。
「殺人鬼が目の前の獲物を黙って逃がす訳なかろう？
いさ、参る！」
***
―――鋼と刃がぶつかる金属音が鳴り響く。
「ぅおらァあッ！！」
エドの雄叫びと共に、また金属同士がぶつかり合った。私は隙を見てマチェーテを振りかざし頭部を狙うが、それも刀で受け流される。
『(2人がかりでもこれか……ッ！)』
歯が立たない、とはこういう事を言うのだろう。
首筋に狙いを定めてきた刀をマチェーテで受け流し考える。何か他に打開策は無いのかと。
すると、48は次にエドへ矛先を向けた。エド身体を捻り、殺人鬼の斬撃を間一髪で避ける。
「っ…」
しかし、肩に少し掠ってしまったようで、エドの血液が花弁の様に空中に舞った。私は掌を合わせ、48の方向へ巨大な棘を錬成、しかしそれもかわされてしまった。
――錬成するだけ時間の無駄か。
錬成するために姿勢を低くしていた為、間合いを詰めてくる48の攻撃を僅かにかわし損ねる。頭から生暖かい液体がボトリと地面に零れた。
せっかく傷塞がったのに。
地面に模様を作る赤い液体を見て、脳裏に呑気な考えが過ぎった。その間にも斬撃は止まず、私は地面を思い切り蹴り飛ばし、48の頭上へ跳躍する。
「…ほう、見事な跳躍力だ」
『殺人鬼に褒められても嬉しかねーよ』
着地してすぐ、マチェーテを構え48へ特攻。私の斬撃はまたもや刀で受け止められ、そのまま弾かれた。
「はっはっは、久しぶりに手応えのある元気な獲物でうれしいぞ―――だが、その傷と疲労では勝負は目に見えている」
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作者名：はちまき | 作成日時：2022年2月20日 1時
