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何かが折れる音と共に、私とぶつかってしまった相手は地面に尻を打った。
打った部分を擦りながら前を見ると、何やら上手く立ち上がれない様子の綺麗な女性と目が合う。
女性の足元を見てみると、ヒールが折れてしまっているせいで立ち上がれない事が分かった。
その黒髪の女性は、切れ長の赤眼を困った様子で細める。
「ごめんなさいね、ぶつかってしまって…悪いけど、ヒールが折れてしまったから少し肩を貸してくれないかしら？」
『いえいえ、ちゃんと前を見て歩いてなかった私の責任ですので…少し待っててください』
「待つ？」と、不思議そうな顔で首を傾げる女性に私は得意げに微笑む。
切り離された部分のヒールを拾い上げ、彼女が履いている折れた靴の近くにそれを置く。私は両手をパンッと合わせ、折れたヒールに両掌を当てがう。
発生した青い光が去った後、女性の履いていた靴には新品のように綺麗に直ったヒールが繋がれていた。
「まあ…これは…あなたもしかして錬金術師さん？」
『ええ、そんなところです』
「新品みたいに綺麗だわ…本当にありがとう。お嬢さん」
長い黒髪を揺らしながら立ち上がった女性は、赤い瞳を細めながら私へ感謝の言葉を述べる。照れ臭くてつい俯いてしまった私に、女性は微笑みながら問いかけた。
「お名前をお聞きしてもいいかしら？」
『A…A・エルリックって言います』
「そう、可愛らしい名前ね。私はソラリスって言うの」
私のおでこに軽い口付けをして、ソラリスさんは「また会いましょう」と妖艶な笑みを浮かべると、手を振ってそのまま去って行った。
＿＿＿＿それにしても珍しい瞳の色だったな。赤い瞳はイシュバール人しか持っていない筈なのに。血縁にイシュバールの血を引いている人物でもいるのだろうか。
「Aちゃん、もう日が暮れるわ。早く図書館に戻りましょう」
『それもそうですね』
少し引っかかる事もあったが、長居し過ぎてしまったことを反省し、少尉と共に車に乗り込んで私達は中央図書館へと急いだ。
＿＿＿＿＿
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作者名：はちまき | 作成日時：2022年2月20日 1時
