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「ふむ…凄いですね、もう完全に傷が塞がっている」
私の頭や右腕をぺたぺたと触りながら医者は驚嘆する。
私は今、少尉に付き添いで病院へ来ていた。
人もあまりいなかったせいか待ち時間はほとんどないも同然で早めに診察してもらっている。
「＿＿＿＿しかし、傷が傷なのでもしかしたら…いえ、非常に高い確率で痕が残ってしまうと思います」
『…そう、ですか』
眉間に皺を寄せながら非常な現実を突きつけてくる医者に、私の表情が徐々に暗くなっていくのを感じる。
痕が残ること自体は正直どうでもいい。しかし、この傷痕のせいでエドとアルが責任を感じる可能性があるため非常に厄介だ。
あの二人は優しい子だ。きっと「自分のせいで」と自責の念に駆られてしまうだろう。
『(また足でまといになっちまうなぁ…)』
通行料が少なく真理も深く見ていないのでエドより錬成が精密にできない上、力はあるがアル程でもない。
そんな中途半端な自分で迷惑を掛けてばかりなのに、更に二人の足枷になろうというのか。
「＿＿＿＿大丈夫ですか？」
『え、あっ、……大丈夫です』
心配そうな面持ちで言う医者に私は笑顔で返す。
おおよそ陰鬱な顔をしていた私を気にかけてくれたのだろう。
医者は笑顔の私に安心したのか、再びカルテに目をやり話を続けた。
「まあ……傷痕は残ってしまいますが、もう傷口は完全に修復されているのでもう通院する必要はありません。激しく動いても傷が開くことも無いでしょう」
『そうですか…ありがとうございました』
「いえいえ、もうこんな酷い怪我なさらないでくださいね」
去り際に医者に釘を刺されてしまったが、私は『気をつけます』とだけ言い頭を下げ待合室へ戻った。
待合室へ行くと、少尉が礼儀正しく椅子に座り待機している様子が見える。
少尉は戻ってきた私に気が付くと、それまで堅苦しがった表情をふっと和らげ微笑んだ。
「お疲れ様………包帯取れたみたいね。元気そうで良かったわ」
『………そうですね』
思わず傷痕の事を少尉に話しそうになってしまう。
私は喉元まで出ていた言葉を瞬間で飲み込んだ。もし少尉に話してしまえばエドとアルに漏れかねない。
人あたりの良さそうな笑みを浮かべる少尉に嘘をつくのは心が傷む。
駐車している場所へ向かっている最中も、もやもやとした気持ちが晴れることは無かった。
少尉に嘘をついた事、エドとアルに隠し事をしようとしている事、そんな暗い事を考えていたせいだろう。
「きゃっ」
私は人とぶつかってしまった。
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作者名：はちまき | 作成日時：2022年2月20日 1時
