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「じゃあ私そろそろ。本当にありがとうございました」
「ああ、金の事はもういいって」
深く頭を下げるシェスカさん。
顔を上げたシェスカさんはやんわりと微笑んで私達を見つめた。
「本にのめり込む事しかできないダメ人間な私が人の役に立てたのが嬉しかったんです。ありがとう」
「＿＿＿ダメ人間じゃないよ。何かに一生懸命になれるって事はそれ自体が才能だと思うし。それに凄い記憶力あるし自信持っていいよ」
シェスカさんの言葉を良い意味で否定しながらアルは彼女を絶賛する。確かに彼女の記憶力は驚異的だ。私もアルの意見に賛同し、うんうんと頷いた。
そんな私達の様子を見ると、やんわりとした笑みを浮かべていたシェスカさんは、
「ありがとう！」
と、にっこりと可愛らしく笑った。
「＿＿＿＿よっ！」
シェスカさんの笑顔を遮るように、扉が勢いよく開き、軍服を身につけた人物が部屋へ入ってくる。
眼鏡を反射させながら左腕を上げて友好的に接してくるその軍人には見覚えがあった。
『ヒューズ中佐！』
「少佐に聞いたぞ。なんだよお前ら、中央に来たら声かけろって言ったのによー」
「いやぁ急ぎの用があってさ」
「まぁ俺も忙しくて持ち場を離れられなかったんだけどよ。嬢ちゃんは怪我の方大丈夫か？」
『痛みも引いてきたし、今度また病院行って診察してもらう予定です！』
そーかそーかと頭を乱暴に撫でてくる中佐に思わず顔が綻ぶ。中佐に久しぶりに会えた嬉しさでボサボサになった髪をろくに直さないでいると、見かねたエドに呆れられながら直されてしまう。
さすが毎日三つ編みを編んでいるエドなだけあって私の髪はいつもの状態にすぐ戻った。
「仕事が忙しい中をわざわざ会いに来てくれたんですか？」
「いや、息抜きついでだ気にすんな。すぐ持ち場に戻る」
近くに設置してあった椅子に座り、笑いながら語った中佐だったが、その笑顔はため息とともにみるみると曇っていく。
やれやれ、と言うように眉間に皺を寄せて中佐は話し出した。
「まったく……ただでさえ忙しいところに第一分館も丸焼けになっちまってやってらんねーよ」
「第一分館？」
「ああ、軍法会議所に近いってんであそこの書庫にゃあ過去の事件の記録やら名簿やら保管してたからよ。業務に差し支えて大変だよ」
「『「＿＿へーーーーー……」』」
中佐から視線を滑らせながらシェスカさんを見つめる。
……彼女なら記録名簿の復元に最適な人材なのでは？
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作者名：はちまき | 作成日時：2022年2月20日 1時
