第9話 家族の待つ家 ページ47
なつかしい景色が広がる草原。
舗装された道をしばらく歩いていると、遠くに見覚えのある建物が徐々に見えてきた。
すると、向こうから黒い物体がばうわうと鳴きながら近付いて来ている事に気が付いた。あっという間に私達との距離を詰めてきたのは左前脚が義肢の黒い犬____デンだ。
『わっ!』
デンは尻尾を激しく振りながら嬉しそうに私に飛びつく。ベロベロと顔を舐め回してくるベンに可愛らしさと懐かしさを覚えつつ、私はしつこく舐め回してくるベンを半ば強引に引き剥がし頭を撫でた。
ベンと一緒に向こうの建物___いや、家と言った方が正確か。デンとエドの整備師とその家族が住む家へ歩いていくと、玄関前に見慣れた人物が立っていることに気が付いた。
「よう、ピナコばっちゃん。また頼むよ」
エドはこちらに近付いてきたピナコばっちゃんに少佐の紹介を始めた。
「こっち、アームストロング少佐」
「ピナコ・ロックベルだよ」
ピナコばっちゃんは少佐と握手を交わし、タバコをふかしながらエドと私、そして少佐を交互に見るとしわの目立つ口を開いた。
「しかし、しばらく見ないうちに……エドはちっさくなったねぇ」
明らかに私と少佐を対比物にしながらピナコばっちゃんは煽るように言うと、当然ながら逆鱗に触れられたエドはピナコばっちゃんに青筋を立てながら詰め寄った。
「だれがちっさいだって?!このミニマムばば!!」
「言ったね妹よりどチビな癖に!!」
「豆つぶばば!!」
「マイクロちび!!」
「ミジンコばば!!」
唾を飛ばしながら口喧嘩を始めた2人に呆れていると、突然エドを叱責する声が聞こえたと思ったらどこからともなくスパナが飛んできた。そのスパナはエドの頭に直撃し、地面に勢い良く兄は突っ伏している。
スパナが飛んできた方向に目をやると、家の2階のベランダに長い金髪を揺らす少女____ウィンリィが鬼の形相で身を乗り出していた。
エドはガバッと上体を起こすと、
「てめーウィンリィ!!殺す気か!!」
と叫んだ。そんなエドの様子が可笑しかったのか、ウィンリィは楽しそうに笑いながら「おかえり!」と笑顔で私達を歓迎した。
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「んなーーーーーーーーっ!!」
室内にウィンリィの叫び声が響いた。ウィンリィはエドの右腕を指差しながらわなわなと震えている。
「おお悪ィ、ぶっ壊れた」
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作者名:はちまき | 作成日時:2022年2月10日 12時