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「だがこれはあくまで試験的に作られた物でな。いつ限界が来て使用不能になるかわからん不完全品だ。それでもあの内乱の時、密かに使用され絶大な威力を発揮したよ」
なるほど____だからあの教祖の賢者の石は途中で使用出来なくなったのか。
最近死闘を繰り広げた駄目教祖の顔が脳裏に浮かぶ。
「不完全品とはいえ人の手で作り出せるって事はこの先の研究次第では完全品も夢じゃないって事だよな_______マルコーさん、その持ち出した資料を見せてくれないか?!」
「ええ?!」
エドはひどく興奮した様子でマルコー氏に詰め寄った。一方マルコー氏はものすごく困った様子で目を泳がせている。
「そんな物どうしようと言うのかね…アームストロング少佐、この子はいったい…」
「国家錬金術師ですよ」
少佐の答えにマルコー氏は心底驚いた様子で目を見開くと、直ぐに悲痛な様子で顔に手を当てた。
「こんな子供まで……潤沢な研究費をはじめとする数々の特権につられて資格を取ったのだろうがなんと愚かな!!あの内乱の後、人間兵器としての己の在り方に耐えられず資格を返上した術師が何人いたことか!!それなのに君は……」
「バカなマネだというのはわかってる!それでも!!……それでも、目的を果たすまでは針のムシロだろうが座り続けなきゃならないんだ…!!」
右腕を抑えながらエドは声を上げる。マルコー氏はそんなエドの気迫に押され、箱の中にいるアルと私を交互に見つめた。その後、私は今までの事情をマルコー氏に話すと彼は目を伏せ言った。
「そうか…禁忌をおかしたか…おどろいたよ。特定人物の魂の錬成をなしとげるとは…君なら完全な賢者の石を作り出すことができるかもしれん」
「じゃあ……!」
「資料を見せる事はできん!」
『そんな…ッ』
「話は終わりだ。帰ってくれ…元の身体に戻るだなどと…それしきの事のために石を欲してはいかん」
私を含め、エドと少佐はガタッと勢い良く席を立った。
「それしきの事だと!?」
「ドクターそれはあんまりな!」
「あれは見ない方がいいのだ。あれは悪魔の研究だ」
表情で悟らせたくないのか、マルコー氏は私達に背を向けながら話した。
「知れば地獄を見る事になる」
「_____地獄ならとうに見た!」
エドの大声と迫力に、マルコー氏はけわしい表情を見せながら振り返る。一瞬気の迷いが見えたが、それでもマルコー氏の意思は固く再び私達に背を向けると、
「……だめだ、帰ってくれ」
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作者名:はちまき | 作成日時:2022年2月10日 12時