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「そこまでだ」
大佐の声が聞こえた。
男が武器を持っている様子は無かったはず…だとすると銃声は大佐が鳴らしたのか。動くことが出来ない代わりに私は必死に耳をすませた。地面に大の字に倒れている事しか出来ない自分が恥ずかしい。
「危ないところだったな鋼の」
「大佐!こいつは…」
「その男は国家錬金術師殺しの容疑者……だったが、この状況から見て確実になったな。タッカー邸の殺害事件も貴様の犯行だな?」
『……!』
あいつが。そうか、あいつがニーナとアレキサンダーを____
意識が朦朧としている頭に静かに怒りが湧くのを感じる。
「…錬金術師とは、元来あるべき姿の物を異形の物へと変成する者…それすなわち、万物の創造主たる神への冒涜。我は神の代行者として裁きをくだす者なり!」
「それがわからない。世の中に錬金術師は数多いるが国家資格を持つ者ばかり狙うというのはどういう事だ?」
「……どうあっても邪魔をすると言うのならば貴様も排除するのみだ」
大佐と男の話し声が聞こえる。
そろそろ意識が限界に達していた頃、薄れる視界の中ホークアイ中尉の私を呼ぶ声が耳を刺激した。
「Aちゃん、Aちゃんしっかりなさい!……出血が酷いわ。手が空いてる者は早くこの子を病院へ_______」
中尉の言葉を最後に、私の意識は闇の中へ沈んで行った。
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『……痛っ』
鋭い痛みと共に、私の意識は完全に覚醒した。目の前には見慣れない天井。病院だろうか。
右腕に視線を向けると、包帯でぐるぐるに巻かれた痛々しい自身の身体が見えた。頭に手を当てると、そこにも包帯が巻かれているのが分かる。
足には何も問題無かったので、私は痛む右腕を支えながら病室を出た。
「あ、え、A?!」
『あ、兄さん』
病室を出ると直ぐに見慣れた人物達と遭遇した。
外にいたのは右腕が足りないエドと、付き添いであろう身体の大きな軍人だ。
「身体はもう平気なのか?」
『いや、右腕めちゃ痛い』
「だろうな…医者に出歩いていいって言われたの?」
『勝手に出てきた』
私の回答に、エドは額に手を当てて大きなため息をついた。すると突然、隣にいた軍人が詰め寄って来ると、
「いけませんぞ!ただでさえ怪我が酷いのに勝手に動き回っては治るものも治らぬ!吾輩が代わりに医者を呼びに行くから大人しく寝ていなさい!」
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作者名:はちまき | 作成日時:2022年2月10日 12時