【鋼の錬金術師】三兄弟の錬金術師 (ページ39)

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第7話雨の後ページ39

「まずはこの鬱陶しい右腕を破壊させてもらう」

男の手から光が散ったかと思うと、大きな破壊音と共にエドの機械鎧が粉々に砕け散る。
神経が繋がっているせいだろうか＿＿＿エドは苦痛に歪んだ顔で地面に膝をついた。

『兄さん！！』

私は気が付いたら男に向かって針山を錬成していた。しかし、感情に任せて錬成したせいか難なくかわされてしまう。

一瞬で間合いを詰められ、男と私との距離はもう数mもなかった。男は手を私の腕へ突き出すと、つい先程エドにやったように私の右腕を破壊しようと接近してくる。

それだけは避けなくては。そう思って後ろへ咄嗟に移動したが少し遅かった。

＿＿＿＿＿男の指先が、私の腕に触れた。
瞬間、焼けるような痛みと共に右腕の皮膚が剥がれ散る。脳を突くような苦痛に思わず悲鳴を上げそうになったが何とか堪えた。しかし言うことを聞いたのは声帯だけで、私の身体は地面へ力なく倒れる。

「姉さん！姉さんッ！！逃げてよ！！！」

アルの必死な声が聞こえる。
血だらけで尚且つ骨にもダメージがあるであろう右腕を動かす体力は私にもう無い。
さっき蹴り飛ばされた衝撃で頭も打っていた私に、逃げるという考えは残っていなかった。

冷や汗を額に滲ませながら私は男を見上げる。掌が顔に近付いてくるのが視界に写った。＿＿＿＿ここで、私は死ぬのだろうか。

「待てよ」

男の掌が私の頭に触れようとしていた時、ふとエドが言葉を発した。
男はエドの方向へ顔を向ける。

「あんたが狙ってるのはオレだけか？妹…Aまで殺す必要はあるのか？」

「＿＿＿邪魔する者があれば排除するが、今用があるのは鋼の錬金術師…貴様だけだ」

「…そうか、じゃあ約束しろ。妹と弟には手を出さないと」

「兄…」

「約束は守ろう」

何？今、エドは男と何を話した？
私の視界から男の姿が消える。残った力を振り絞って辺りを見回すと、男がエドの方へ歩いていくのが見えた。
なんで、私を殺さない？出血と痛みが酷くて頭が回らない。意識が持たない。

「兄さん、何してる！逃げろよ！！」

アルが何か叫んでいる。何を叫んでいるのかはよく分からない。でも、何かよからぬ事が起きているのは分かる。

「立って逃げるんだよ！やめろ…やめてくれ」

『アル…兄さ…』

「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ！！！！！！！」

辺りにアルの絶叫と、一発の銃声が響いた。