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異様に憲兵との距離が近い褐色肌の男性。
その男性と目が合った瞬間、一瞬胸騒ぎがした気がした。少しするとエドも後ろの男に気が付いたようで、不思議そうにその男を見ている。
「エドワード・エルリック…」
低くドスの効いた声色で兄の名前を呼ぶ男。
瞬間、男の目色が変わった。
「___鋼の錬金術師!!」
ぞわっ、と背筋に冷たいものが流れた。
憲兵は背後の男の顔を見るなり表情を変え、瞬時に腰の銃を手にする____と、同時に男も動いた。
『ッ!!』
私は咄嗟に憲兵の足を払い、地面へ伏せさせる。
男は攻撃が空振りに終わり、憲兵へ掴みかかるはずだった掌を時計台へぶつけた。
するとどうだろう、男が手を着いた位置から時計台が激しい音を立てながら崩れだした。
その光景に私達が圧倒されていると、すばやく男は仕切り直しエドへ向かっていく。
「……ッ、A!アル!!逃げろ!!」
「…逃がさん!」
エドに背中を押され、私達は意味もわからず走り出した。
冷静に状況をなかなか理解出来ていなかったが、少なくともあの男がエドの命を狙っている事だけは分かる。
「ちくしょーなんだってんだ!人にうらみ買うようなことは…………いっぱいしてるけど…命狙われる筋合いはねーぞ!!」
「兄さん姉さん、こっち!」
「『?』」
走っている最中、アルが立ち止まって手招きしたのは小さな路地だ。とりあえずエドと共に入ってみたが、イマイチアルが何をしたいのかが分からない。
『何をしたいのか分からんが…アルだから何かあるんだろ!?』
「もちろん!」
そう言って地面に錬成陣を描いたアルは、路地裏の入口に大きな壁を錬成した。
5、6mはある巨大な壁にエドは「おお!」と声をもらした。
「これなら追って来れないだろ」
『____あれ、でも…』
あの男…時計台を破壊してたから____
案の定、その嫌な予感は当たってしまった。
コンクリートが崩れる音と共に、アルが錬成した壁は穴が開くように大破。勿論破壊したのはあの男だった。
瓦礫を踏みながらジリジリと近寄ってくる男に確かな恐怖を感じながら、私達は路地の奥へと逃走。しかし、それは男の攻撃と落ちてきた瓦礫によって塞がれてしまった。
「…冗談だろ…?」
振り向くと、そこには数歩歩けば届いてしまう距離まで近付いてきている男の姿があった。
「あんた何者だ。なんでオレたちをねらう?」
「____貴様ら“創る者”がいれば“壊す者”もいるという事だ」
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作者名:はちまき | 作成日時:2022年2月10日 12時