・ ページ31
タッカー氏の家へ通い始めてしばらく経ったある日のこと。
本棚の資料をあさっている最中、ニーナが突然身の上の話をしてきた。おそらく話のネタが無くなったからだろう。だとしても話題が重いが。
「へーお母さんが2年前に…」
「うん。実家に帰っちゃったってお父さんが言ってた」
「そっか、こんな広い家にお父さんと二人じゃさみしいね」
「ううん、平気！お父さんやさしいしアレキサンダーもいるし！」
笑顔でそう言ったニーナだったが、小さな声でポツリと呟く。
「でも…お父さん、最近研究室にとじこもってばかりでちょっとさみしいな」
その言葉を聞いた私達はお互いの顔を見合わせる。するとエドはわざとらしく首をゴキゴキ鳴らしながら、
「……あー毎日本呼んでばっかで肩凝ったな」
『肩こりの解消には適度な運動が効果的らしいよ兄さん』
「そーだなー、庭で運動してくっか」
と、腰を上げるとエドはアレキサンダーへ向かってビシッと指を差した。
「オラ犬！！運動がてら遊んでやる！」
『ほら、ニーナもいこ』
私はニーナに手を差し伸べると、彼女はにぱっととても嬉しそうな様子で笑った。
庭へ出た私達は、アレキサンダーやニーナを交えて走り回ったり寝そべったりして遊んでいる。
エドはというと相変わらずアレキサンダーの下敷きにされていた。
ころころと可愛らしく笑うニーナの笑顔に、研究で息詰まった心が少し軽くなったような気がした。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
＿＿＿＿＿＿＿＿＿
ゴロゴロと空が唸った。
今日は朝から天気が悪く、今の雲の状態ではもうすぐ降りそうな様子だ。
私達はアルを先頭にタッカー氏の家の呼び鈴を鳴らした。
「こんにちはー」と言いながら扉を開けるアルだったが、そんな私達を迎え出る者が出てこない。いつもだったらタッカー氏やニーナ達が出てくれるはずだが…
いつもと様子が違う空気を感じとった私達は、失礼だとは思いつつも勝手に家へあがった。
「タッカーさん？」
『ニーナ？』
「タッカーさーん」
名前を呼びながら家の中を探索するが、イマイチ反応がない。もしかして留守なのかと思い始めたころ、ふと研究室の中から人の気配を感じた。
覗いてみると、室内には見慣れた背中。タッカー氏だ。
「なんだ、いるじゃないか」
「＿＿＿ああ、君たちか」
そう言って微笑みながら振り向く彼の様子に、私は少し違和感を覚えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 64人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はちまき | 作成日時：2022年2月10日 12時
