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「こっちが資料室」
タッカー氏がゆっくりとドアノブを引いて開いた扉の向こうには、いくつもの本棚と資料のある、知恵の宝庫のような部屋が広がっていた。
エドは口をあんぐり開けながら、その資料の多さに圧倒されている。
「自由に見ていい。私は研究室の方にいるから」
「よーし、オレはこっちの棚から」
「じゃあボクはあっちから」
『それなら私は奥の方から見ようかな』
早速本棚から資料を取ろうとしている私達へ大佐が話しかけてきた。
「私は仕事にもどる。君達には夕方、迎えの者をよこそう」
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ゴーン、と時計の音が鳴った。
私は奥の本棚にいたので時間を確認する事は出来なかったが、遠くから聞こえる慌てたエドの声にかなりの時間が経っていることが推測される。
「お、いたいたA。アルどこにいるのか知ってる？」
『ああ、アルなら向こうの本棚で＿＿＿＿「ぎにゃ〜〜〜〜〜〜〜！！」
私が向こうの本棚を指さしていると、突然エドがおかしな悲鳴と大きな音を立てた。
驚いてその方向を見ると、またもや大型犬＿＿＿アレキサンダーの下敷きになっている兄の姿がある。
その物音に気付いたのか、アルが肩にニーナを乗せながら本棚の横からひょっこり現れた。
「あ、兄さん」
「“あ、兄さん”じゃねーよ！！資料も探さねーで何やってんだ！！」
「いやぁニーナ遊んでほしそうだったから」
「なごむなヨ…」
「アレキサンダーもお兄ちゃんと遊んで欲しいって」
ニーナがそう言うのでエドの方向を見てみると、案の定エドはアレキサンダーに顔をベロベロ舐められているのが目に入った。
「ふっ…この俺に遊んでほしいとはいい度胸だ…獅子はウサギを狩るのも全力を尽くすと言う……
このエドワード・エルリックが全身全霊で相手してくれるわ犬畜生めッッ！！！」
「(子供だ…)」
『(子供だ…)』
そんなこんなしてしばらくした後、軍の人が迎えに来てもエドはアレキサンダーの下敷きにされていた。迎えに来た軍人は呆れながら床に突っ伏しているエドを見下ろしている。
「……何やってんだ？」
「いや、これは資料検索の合間の息抜きと言うかなんと言うか！」
「で、いい資料はみつかったかい？」
「……」
「………また明日来るといいよ」
黙り込んだエドの様子を察してか、タッカー氏は苦笑いしながら明日への持ち込みを提案した。
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作者名：はちまき | 作成日時：2022年2月10日 12時
