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「いや申し訳ない。妻に逃げられてから家の中もこの有り様で……」
タッカー氏の家の中に招かれた私達はある部屋の一室で談笑している。散らかっている部屋の中で、タッカー氏は自嘲するかのように笑いながら私たちへお茶を振る舞った。
「あらためまして、初めましてエドワード君。綴命の錬金術師、ショウ・タッカーです」
「彼は生体の錬成に興味があってね。ぜひタッカー氏の研究を拝見したいと」
エドの要望を大佐は代弁すると、タッカー氏は「ええ、かまいませんよ」と微笑んだ。するとタッカー氏は先程の笑みをスっと消すと、真面目な面持ちでエドへ問いかける。
「でもね、人の手の内を見たいと言うなら君の手の内も明かしてもらわないとね。それが錬金術師というとのだろう_______なぜ生体の錬成に興味を?」
「あ、いや、彼は…「大佐」
大佐はタッカー氏の問いに困ったような表情を見せ、答えようとしたがそれはエド本人によって静止される。
「タッカーさんの言う事ももっともだ」とエドは言うと、慣れた手つきで自身の上着を脱ぎ、義手を露にした。
タッカー氏はその義手を大層驚いたように凝視している。
「……なんと……それで“鋼の錬金術師”と____」
エドは義手を見せた後、どうしてこのような状態になったのかと身の上を語り出した。
一通り聞き終わったタッカー氏は、神妙な面持ちで机の上に肘を着き手を組むと、
「辛かったね」
と、私達兄弟に一言そう言った。
「彼のこの身体は東部のあの内乱で失ったと上には言ってあるので、人体錬成の事については他言無用でお願いしたい」
「ああ、いいですよ。軍としてもこれほどの逸材を手放すのは得ではないでしょうから。では…」
タッカー氏は席からスっと立ち上がると、私達へ向かって部屋の外から手を招いた。
「役に立てるかどうかなわかりませんが、私の研究室を見てもらいましょう」
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「うわぁ…」
研究室へ立ち入ると、そのには異様な光景が広がっていた。いや、生体の錬成について研究している彼なら当然の部屋と言うべきか。
檻に入れられた無数の合成獣や動物達、ホルマリン漬けにされた合成獣の生首や臓物の数々……簡単に言うと、かなりショッキングなものが無数に鎮座していた。
「いやおはずかしい…巷では合成獣の権威なんて言われてるけど実際のところそんなに上手くはいってないんだ」
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作者名:はちまき | 作成日時:2022年2月10日 12時