第1話 三人の錬金術師 ページ3
《この地上に生ける神の子らよ。祈り信じよ、されば救われん》
《太陽の神レトは汝らの足元を照らす。見よ、主はその御座から降って来られ、汝らをその諸々の罪から救う》
《私は太陽神の代理人にして汝らが父》
店の看板に乗っているラジオから放送が流れている。聞いたところ宗教放送らしい。
「……ラジオで宗教放送?」
弟がそう呟く。私は飲み物を飲みながら首を傾げ
た。
「神の代理人…って、なんだこりゃ?」
兄が食事を頬張りながら疑問を零した。同感だと示すように私は首を縦に振る。
その一部始終を見ていた店の店主は眉間に皺を寄せ、酒瓶を片手に私達へ問いを投げかけた。
「いや、俺にとっちゃあんたらの方がなんだこりゃなんだが…
あんたら大道芸人かなんかかい?」
ごぶばっと兄が飲み物を吹いた。
兄は心底心外だとでも言いたそうな表情で、悪い目付きをもっと釣り上げ店主に突っかかる。
「あのなおっちゃん、オレ達のどこが大道芸人に見えるってんだよ!」
「いやどう見てもそうとしか…」
私は兄を『まあまあ…』と宥める。まあ巨大な鎧を身に付けた弟に赤い目立つマントを羽織った兄がいるんだ。そう思われても仕方が無いだろう。
私?私は眼帯以外は目立つ様なところはないと思う。多分。
「にしてもここらじゃ見ない顔だな。旅行?」
「うん、ちょっとさがし物をね」
兄は不貞腐れながら面倒くさそうに店主の質問に答えた。
『ところで店主さん。この放送ってなんですか?』
「コーネロ様を知らんのかい?」
「……誰?」
店主は驚いたような顔をし、周りにいた客達もやいのやいのと話の話題に噛み付いてきた。
「コーネロ教主様さ。太陽神レトの代理人!」
「奇跡の業のレト教、教主様だ。数年前にこの街に現れて俺達に神の道を説いてくださったすばらしい方さ!」
「そりゃもうすごいのなんの」
「ありゃ本当に奇跡!神の御業さね!」
周りの客の熱心な話に圧倒されながら私は苦笑いをうかべた。一方兄はそんな人達の話になんか聞く耳を持つつもりもないらしい。
「…って聴いてねぇなボウズ」
「うん。宗教興味無いし」
机に顎を置きながらだるそうに兄は答えた。
そうして直ぐにすっと席を立つと、兄は机に勘定を置く。
「ごちそーさん。んじゃ行くか」
『そだね』
「うん」
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作者名:はちまき | 作成日時:2022年2月10日 12時