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しばらくすると、アルは一人分の食事を持って店の中から出てきた。食事はアルに出された分らしい。
さっきまでアルを裏切り者だと喚いていたエドだったが、食事を持ってきたアルに対し直ぐに機嫌を良くしていた。ゲンキンなやつだ。
「____ふーん…腐ったおえらいさんってのはどこにでもいるもんだな」
アルが持ってきた情報を聞いたエドがそう呟いた。
簡単に言うと、ここの炭鉱で働いている人はそのおえらいさんのせいで生活が苦しくなっているらしい。
「おかげで十分な食料もまわってこないんだってさ」
「………そっか」
エドはサンドイッチをふたつに分けながら話を続ける。私はふたつに割ったサンドイッチのひとつを貰い口の中へ頬張った。
「しかしそのヨキ中尉とやらのおかげでこっちはえらい迷惑だよな。ただでさえ軍の人間は嫌われてんのに」
ズズ、とエドはコーヒーを啜る。
「国家錬金術師になるって決めた時からある程度の非難は覚悟してたけどよ。ここまで嫌われちまうってのも…」
「………ボクも国家錬金術師の資格とろうかな」
『私も』
「さっきAにも言ったが国家錬金術師になるのはやめとけ!針のムシロに座るのはオレ1人で充分だ!軍の犬になり下がり____か、返す言葉もないけどな」
『おまけに禁忌を犯してこの身体…』
「師匠が知ったらなんて言うか…」
『「「…………………………こ、殺される………!!!」」』
そう言ってガチガチと3人で震えていると、何やら店の方が騒がしい事に気が付いた。
「何の騒ぎだろう…」
『行ってみるか』
3人で店の中の様子を伺うと、店内には見覚えのない3人の顔があった。服装からしてあの3人組は軍の人間だろう。話はあまり聞こえなかったが、カヤルの逆鱗に触れたのか真ん中の軍人が雑巾を顔に投げつけられていた。
瞬間、真ん中の軍人がカヤルに平手打ちをかます。
地面に転がったカヤルに剣を抜く軍人を見て、この軍人がカヤルを切り捨てようとしている事がわかった。
『(間に合わない____!!)』
と、思ったが、その軍人の斬撃はエドの機械鎧によって防がれた。衝撃で折れる剣を凝視する男。
「なっ…なんだ、どこの小僧だ?!」
「通りすがりの小僧です」
「おまえには関係ない、下がっとれ!」
「いや、中尉さんが見えてるってんで____あいさつしとこうかなーと」
そう言いながらエドはズボンのポケットから“銀時計”を中尉に見せつけるように取り出した。
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作者名:はちまき | 作成日時:2022年2月10日 12時