◇愛を学ぼう ページ3
「愛って何だと思う?」
食べ終わったアイスを支えていた棒をぼんやりと見つめながら隣を歩く彼女は言った。
思わず顔をゆがませた。
一瞬、それが自分にむけて発せられた問いだと気づかなかった。それほどまでになんだかぼんやりとした問いかけだった。
目だけを動かして俺をみる。自分よりも少し低い位置からの視線に、ちょっぴりドキリとする。
誤魔化すみたいに汗をぬぐって俺は聞き返す。
「それ、俺に聞くの?」
彼女はだまってうなずいた。細くて白いうなじを汗がつたっていった。
人の気も知らないで。心中で毒づく。
「急にそんなこと聞かれても…。女友達に聞けよ。」
無愛想にそう返した。
「君に聞いてみたいの」
だから本当にこの子は…。
素っ気ない返しにいちいち心臓がうるさい。
多分、何の気なしに言ったんだろう。ゴミ箱を見つけて棒を投げ捨てたその動作に動揺やらは感じられない。
ナイスシュート。一人だけ気まずくて軽い声をとばす。
愛、愛ねぇ。
そのままの声で繰り返す。ちょっと困る質問だ。
一介の男子高校生に、そんな哲学つきつけられても。
「なんか、あれだよな、高校生が部活帰りにする話題ではないな」
話題をそらすようにそんなことを言ってみると、真面目に答えてと怒られた。
「あっこれ真面目にする話なの?」
さらに茶化したようにいうとバカにするなとすねられた。
してない、してないよ。
真面目に答えることを期待されたので、真面目に考えることにする。
愛ってなんだろう。
例えば俺は彼女が好きだけど、愛とはなにか違うんだろうか。
多分彼女は俺が好きだけど、愛してるわけではないんだろうか。
今、答えなくちゃいけないような、もっと時間をかけるべきなような。
グルグルと渦巻く思考がじれったい。
立ち止まってゆっくりと口を開く。
やけに心臓がうるさくて頬を流れる汗がうっとうしい。
「正直、よく分かんねぇわ」
言いたいことはこんなことじゃない。
もどかしそうな顔で彼女は足を止めた。
「だからさ、お互いに教えあいっこしよう。」
無意識にタオルを握る。
ずっと考えていた告白するときの、言葉とか、シチュエーションとか全部吹っ飛んでいた。
暑さに頭がゆだる。バクバクと心臓がなって、うるさい。
「一緒に勉強しよう」
やっと彼女は満足そうな表情をみせた。
「じゃあ、今教えて?」
ねだられて、俺はあっさりファーストキスを夏に捧げた。
未来の奥様に愛を教えるために。
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作者名:ハル | 作成日時:2018年7月11日 23時