◎妹の彼氏（◇） ページ5
俺の妹は変わっている。
高校一年生の妹にはオカルト趣味があるのだ。
花の女子高生が暗い部屋にこもり、怪しげな本を読み漁るのはどうなのだろうか。
兄としては心配である。
そんな妹の部屋から最近楽しげな声が漏れてくる。
最初は友達と電話でもしているのかと思っていたのだがその電話口から男の声が漏れ聞こえたのだ。
ついにあいつにも彼氏が出来たのか...！
嬉しいような寂しいような複雑な気持ちを抱えながら素直に祝福していた。
が。
「ヤダー、もう！」
現在進行形で聞こえてくる電話は試験前の俺への当てつけだろうか。とにかくうるさい。
一言文句を言ってやろうと立ちあがりノックもせずに妹の部屋の扉を勢いよく開く。
「あっお兄ちゃんノックしてよね！」
妹の声が耳に入らない。
扉を開けたそこに...何かがいた。
黒い羽をはやし、禍禍しい角を持ったおよそ人とは思えない異形の姿がそこにはあった。
静かに扉を閉めた。
いやいやいやちょっと待て！
え、ちょ、なに!?なんなの!?
きっと試験前で疲れてるんだ。そうに決まってる。
全てをなかったことにしてやり直すことにした。
今度はきちんとノックする。
がちゃりとドアノブがなって扉が開いた。
今度はそこに黒髪で黒いベストを着たイケメンがいた。
角が生えたままだった。
惜しい！微妙に隠せてない！！
思わず頭を抱えてしゃがみこんだ。
「お兄ちゃん、紹介するね！こちら悪魔のディアヴォロスさんだよ！」
「それ言っちゃうの!?」
秘密にしなくて大丈夫!?
「それでね、あのね、私の彼氏なの！」
「爆弾発言の後によくそれ言えたなお前!!」
落ち着いて話を聞いてみると、どうやらこの悪魔は妹が呼び出したらしい。
いつものようなインチキなオカルト本ではなく本物が当たったようだ。
それでさらにとんでもないことに呼び出した悪魔が妹に一目惚れしたそうなのだ。
「だからね、特別にお願い何でも聞いてくれるし、魂も死んだ後にしかとらないんだって！しかも一生養ってくれるって！」
「それ絶対騙されてるぞ！」
「まさか！僕は嘘はつきません。妹さんのことを一生大事にします！お義兄さん」
「誰がお義兄さんだ！」
はぁとため息をつく。
なんなんだよこいつは。悪魔だよな？
妙にぼんやりとした雰囲気に流されそうになる。
ニコニコと微笑みあっている二人を見て、なんだかもうどうでもよくなってきた。
＿＿＿俺の妹は変わっている。
悪魔を彼氏にするくらい。
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作者名：ハル | 作成日時：2018年7月11日 23時
