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第十三話 ページ14

紫月は村のあちこちに咲き誇る彼岸花を横目に、薬売り達と合流し、その後互いに情報交換を行った。

やはり皆口を揃えて隣村が滅んだ情報を口にし、その他は大してそれらしい物ではなかった。


「やはり、紫月さんが聞いたその婆さまとやらに話を聞く必要があるな」

「そうですね
紫月さん。その婆さまは今何方に?」

「はい。此方です」


紫月は先程大工に教わった道を辿り、二人を案内する。
事は順調に進んでいるものの、紫月は異様な胸騒ぎを感じたまま行先を見つめた。

しばらく淡々と歩くと、婆さまがいるという建物へとたどり着いた。

その様態は一見普通の古民家で、物静かなものだった。


「なんだ。拍子抜けだな。
村の長ぐらいの立場だと聞いたものだから、もっと豪華な屋敷かと」


浅葱はそう口にする。
間を置いて、薬売りがその古民家の戸を叩こうとすると、戸に触れる間近で突然ガラリと戸が開いた。

その時、隙間から覗いてでてきたのは先程の大工。
話を聞くと、どうやら我々の事を婆さまに話してくれたらしい。


「さ、入りな」

「失礼します」


三人はその家に上がり、大工に案内され婆さまのいるという部屋へ案内された。
廊下には彼岸花が飾られており、余程この村ではこの花が愛されている事が分かる。


「婆さま。例の客人を連れてきたぞ」


大工が閉じたままの襖にそう語りかけると、部屋の中からか小さく細い声が聞こえた。
大工はその声を聞き、襖を開けた。

囲炉裏に火をくべるその老婆は、腰がひん曲がり、灰をつつく棒を持つ手も微かに震えていた。


「客人とは珍しい。
ささ、お座りなさい」

「ありがとうございます」


婆さまと向かい合うように出された座布団に座り、薬売りは早速といったところで話の本題へと入る。


「我々は長く旅をしているものですが、ここまで多く彼岸花が咲く村を見たことが無い。
何故彼岸花がここまで多いのかお伺いしたく」


婆さまはその薬売りの言葉を聞くと、動かしていた手を止め、一つ息をき、しゃがれた声で話し始めた。


「この村は山を切り開いて作られた村だ。
山に住んでいた者らはこの村を疎ましく思っていただろう。

そしてある時から悪霊が村を襲うようになりあらゆる天災にみまわれた。ついに人々は悪霊が嫌う華を村の至る所に植え付けた。

それがこの彼岸花だよ」


そう答える婆さまに、さらに薬売りは問い詰める。


「その、悪霊と言うのは...?」

「山の神と言われたダイダラボッチさ」

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作者名:赤青ほととぎす/瑪瑙 x他1人 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2018年11月27日 22時

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