十九ノ幕 ページ21
泡沫のような薬売りの言葉は、いつだって謎掛けめいている。
その裏には何か意味があるのだろうが、紫月には到底、考えが及ばない。
しかし、恐ろしいとは思わなかった。
己の身に起こっていることは不可解だが、薬売りの言葉はいつだって嘘がない。
それは、その傍で時を過ごしてきた紫月が一番よくわかっている。
だから、さほど深刻には考えていなかったのだ。
その夜、再び穴を掘る夢を見ても、どこか他人事のように感じていた。
前日の夢と同じ場所に膝をつき、両手で砂利と土をすくっては脇へと捨てることを繰り返す。
少しだけ深くなった穴の周囲には青白い光がまとわりつき、時折、掘る手に触れては霧散する。
特に目立った出来事もない、穴を掘るだけの夢。
単純で単調なそれは不気味で、けれど、どこか――ほっとした。
土をかき出す度、胸にぽかりと空いた穴が僅かに満ちていくような気がした。
何のために穴を掘っているのか。
埋めるためか、掘り出すためか。
この行動に何の意味があるのかと思いながらも、身体はひたすらに穴を堀り続ける。
そうして、また、あの歌が聞こえる。
――掘って、投げて、埋めましょう。
――結んで、縛って、沈めましょう。
幼子が歌うような、老人が口ずさむような、不思議な声の歌。
あれは何だろう。何を意味するのだろう。
そう思いながらも紫月は一人、淡々と穴を堀る。
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瑪瑙(プロフ) - ちびレトさん» ありがとうございます!物語もそろそろ佳境、楽しんで頂けたら幸いです(^^) 頑張ります! (2018年11月9日 21時) (レス) id: 2ce5584cfa (このIDを非表示/違反報告)
ちびレト - 更新待ってましたー!ヽ(*´∀`)いつも楽しくドキドキしながら読んでます♪♪ (2018年11月9日 18時) (レス) id: 4dbeda4f8f (このIDを非表示/違反報告)
瑪瑙(プロフ) - 栞さん» ありがとうございます!彼女自身、いろいろと感情が揺さぶられているようです…。今後もよろしくお願いします! (2018年10月10日 23時) (レス) id: 4aa70732e7 (このIDを非表示/違反報告)
栞(プロフ) - うわぁ...紫月さん可愛ええ...。いつも楽しく見てます… (2018年10月10日 22時) (レス) id: cbb68f3624 (このIDを非表示/違反報告)
瑪瑙(プロフ) - みづなさん» ありがとうございます!そう言って頂けると嬉しいです(^^) 亀更新ですが、これからもよろしくお願いします! (2018年9月12日 21時) (レス) id: 4aa70732e7 (このIDを非表示/違反報告)
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