【オリジナル】花売り少女と時止めさんⅣ【名前変換可能】 (ページ7)

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次にルチルが目を覚ましたのは、それから数時間ほど経った頃だった。すっかりあたりは夜に更け、空には月が高く上っていた。いつの間にか熟睡していたらしい。
　誰かがソファの上まで運んでくれたらしく、ご丁寧にブランケッドまでかけてある。ルチルはそれに小さくため息をつき体を起こした。辺りを見回せば、ロイドも、ベルも座った状態で眠っている。カランは恐らくユーリのいる部屋だろう。こいつらも疲れてるだろうに悪いことしたなと、ルチルは頭をかいた。特にロイドは目立った外傷はないようだが、強力な魔法を完全に食らっていたはずだ。体の疲労はルチル以上だということは簡単に予想がつく。
　体格からしてベルやカランは、ルチルを運べるとは思えない。となると、運んだのは恐らくロイドだろう。ユーリの救助を手伝ってもらって、こんなことまで迷惑をかけてしまうなんて……ルチルは小さくうなだれた。

　ふと目に付いた、バルコニーの扉を開けてルチルは手すりに肘を立てた。街はもうすでに眠り始めているようで、たまに点々とした光が浮かび上がっているのが見える。風がひょうと音を立て、吹いた。ルチルは髪を押さえて、目をじっと細める。
　もっと、強くならなきゃ。そっと胸元を押さえた。強くならなきゃ……誰も守れない。
　そう考えると、胸がわずかに締め付けられるようなそんな感覚に襲われた。かすかにルチルの瞳孔が震え、悲鳴にも似た吐息が漏れる。

「ルチル……？」

　すると、聞きなれた声が耳元に届いた。目を見開いて、そちらを見れば金色のふわふわとした髪を揺らし、ユーリがちょこんとその場に立っていた。水色の大きなひとみが、ぱちくりと瞬く。彼女は小首をかしげる。

「……やすまなくて、大丈夫なの？」
「お前こそ」

それに彼女は苦笑いを浮かべて目を細めた。

「眠りすぎちゃって」
「そっか」

彼女が横にやってくる。あらためて思うが小さいなあと感じた。一般的には平均身長よりも一回り小さいくらいのようだが、大人しい性格のためか小さく縮こまって見える。
　澄んだ水色ののひとみをわずかに揺らしながら、彼女はうつむく。恐らく不安がまだ拭いきれていないのだろう。
　やがて彼女は小さく震えた声でルチルに問うた。

「ねえ、ルチル。私のこと、話してもいい？」