【オリジナル】花売り少女と時止めさんⅣ【名前変換可能】 (ページ49)

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つかみどころのなさそうな笑みを浮かべるルシファーにノアールは眉根をひそめて、溜息をついた。そしてユーリを一瞥する。
　あのラベンダーティーはルシファーの分だったらしい。

「……こいつのことはほっておけ。いつもこれなんだ。さて、ユーリ。話を戻そう。問い返すような形で悪いが聞かせてくれ。答えによって説明の内容が変わってくる」
「……は、はあ」
「お前は、俺のことを思い出したか、否か」
「へ？」

ユーリはそれに目を丸めた。
　“思い出す”というノアールの問い方からして、恐らく接触があったのだろう。けれど、そんな記憶ユーリには一切ない。唯一あるのは、あの夢。ノアールの黄金の目を見たあの夢。それだけだ。
　戸惑っているユーリに微笑みルシファーは、どこか弾んだ声でノアールに話しかける。

「ノアールくんの勘が外れたみたいだね。珍しいこともあるもんだねぇ？あははっ、明日は雨かな？」
「……ふむ、見当違いか。てっきり俺の名前を知ってたから記憶が戻っているのかと思ったんだが」
「あー、僕がこの子とあったとき、ノアールくんのこと聞かれたから名前出しただけ。それ以前にも銀龍くんや白龍くんから名前を聞く機会はあったかもだし」

おちゃらけているルシファーだが、やはり頭の回転はいいらしい。
　ノアールはルシファーの説明に、分かったと頷きユーリを見た。それにユーリは体を強張らせた。なんというか、しっかりしといたほうがいいような気がしたのだ。するとそれを見抜いたらしいノアールは「別に難しい話でもないから、肩の力を抜いておいていいぞ」とかすかに笑った。
　ああ、美人さんだ。と、ユーリは心底どうでもいいことを思いながら頷いて、すこし体の力を緩める。

「まあ、めんどくさいから余談は抜いて話す。結果から言うと、俺とお前は会ったことがある。だけどお前が覚えていないのは、俺がお前の中から“ノアール”という人物といた記憶、そして存在を抹消したからだ」
「そうな……へ？」
「えぐいことするよねえ……君」
「どうだろうな」

ユーリはノアールの言葉に思わず口をあんぐりと開ける。ノアールさんと……私が会ったことがある？だけど、記憶はノアールさんが自分自身の手で消した？まったく持って意味が理解できない。というか理解しようとしてもあまりにもその出来事が突飛過ぎて理解できない。
　それを分かってか分からずかルシファーはユーリの隣でによによと笑っていた。