【オリジナル】花売り少女と時止めさんⅣ【名前変換可能】 (ページ45)

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相変わらずルチルは不満げな様子ではあるが、先ほどよりは落ち着いている。ユーリはルチルの鼻の頭あたりをわしわしと撫でながら、ノアールをじっと見つめる。

「でも、ルチル優しいですよ」
「優しいと心を開くのは違うだろ。確かにルチルは優しい性格ではあるが」
「あ、そっか」
「兎にも角にも、ルチルの中でユーリの存在が大きいのは事実だ。家族で好きな人……なのかもしれない」

その言葉にユーリは目を瞬かせた。間もなく顔がカッと熱くなるのを覚える。言葉を失って、うつむけばそれ答辞に同時にビタァンと大きな音が響きユーリは飛び上がる。音のしたほうを見ればそこにはルチルの尻尾があった。
　ノアールはルチルの傷口から目をそらさずに「図星か」と小声で呟いた。それにルチルは喉からグルルと音を鳴らし、牙を向ける。すかさずユーリはそんなルチルを静止した。

「多分、そうやって牙を向けるのはルチルは俺のことが生理的に嫌いなんだろうな」
「へ？」
「今、自分の状況下に苛立ってるって言うのもあるだろうが、元々あまり好かれてはいないとは思う」

ユーリがルチルのほうをじっと見れば彼は相変わらず不満そうな顔のまま大きく鼻息を漏らした。

『別に生理的に無理っていうわけじゃない』

唐突に聞こえたルチルの声。ユーリがルチルをじっと見ればルチルはわずかにこっちに視線を向けた。
　今、喉動いてた……？するとノアールがすぐに説明をいれてくれる。

「魔法の一種だなこれも。テレパシーって言うものに近いかな。原理は複雑だから、やろうと思って出来るようなものじゃないが……まあ、いい。話を続けてくれ」
『お前の余裕な性格と、それに見合う器と力量が気に入らないだけ。お前見てると恥ずかしくなる。足元にも及ばないから。だから嫌い』

どことなく子供のような言い分にユーリは一瞬驚いたが、しばらくして頬が緩むのを感じた。
　初めて、ルチルのそういう弱さに似た何かを見た気がしたのだ。そんなユーリに気付いたのかルチルは「何、文句ある」といわんばかりに視線をじっと送ってきた。怒られるかな、と内心重いながらもユーリは口に出した。

「なんか、子供みたい」

それにノアールはぶっと噴き出し、ルチルは耳を後ろに寝かせた。不服……らしい。ユーリはそれに慌ててすかさず付け足し始めた。

「あ、違う違う！嬉しいなって思って。ルチルのそういう面が見れて」