【オリジナル】花売り少女と時止めさんⅣ【名前変換可能】 (ページ5)

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「……ひとまずロイドたちに目覚ましたこと言ってくる」

　ルチルはそう言って、席をたった。ユーリは少し寂しそうな表情を浮かべたが、間を置いて小さく首を縦に振った。そんな彼女にルチルは微笑みを返して、部屋を出る。すると手前のソファに座っていたベルが目を丸めた。

「お、ルチルさん、どうしました」
「……ユーリが目覚ました」
「あ、良かった。ずっと傍にいたかいあったじゃん」

ロイドの言葉にルチルは眉根を寄せる。
　確かに彼女のそばについていたのは事実だ。人間はもろい。当然、彼女も。それに彼女は自分よりもずっと小さくて細い。だから余計心配になった。目を離せば息の根が止まってしているんじゃないかと。そんなことないと何度も自分に言い聞かせた。けれど、不安で不安で仕方なくてルチルは彼女の傍にずっといたのだ。
　ロイドの頭をぶんなぐってやろうかと、一瞬考えたがいくら言ってもやっても変わらないことはルチルもよく知っていたので、大きくため息をつきその場に座り込んだ。ロイドは「殴らないんだ」と小さく漏らしていたが、正直どうでもいいルチルは膝の中に顔をうずめる。
　彼女が目を覚ました。その安心感が今になって押し寄せてきたのだ。それにベルは目を大きく見開き、不安そうにルチルの顔を覗き込んだ。

「ルチルさん、大丈夫ですか」
「……」

しかし、ルチルはそれに言葉を返すことができない。まるで喉に何かひっかかったように、声を発することができないのだ。やがて、それは吐き気に変わった。思わず、口元を押さえて体を小さく丸めれば、異変に気付いたのだろうロイドが立ち上がり、ルチルの近くに腰をかけるとルチルの背中をさすった。

「……ベル、カランさん呼んできて」
「あ、はい！分かりました！」

ベルはそう言うとパタパタと走って、どこかへ姿を消す。
　ルチルはそんな自分が情けなくなり、わずかに唇を噛んだ。

「悪い」
「……別にいいよ。お前も頑張ってたし」

こういうときにさらりとそんなことをいえるロイドに内心、苛立ちを覚えつつ「本当に俺ってだめだな」と零す。その瞬間、ロイドは強くルチルの背中を叩いた。ルチルはいっ！とわずかに悲鳴を漏らす。

「……普段の仕返し」

ロイドはそういって目を細めた。

「だめなやつを誰が頼るか。お前は俺にとっても、あのこにとってもだめな存在じゃねえよ」