【オリジナル】花売り少女と時止めさんⅣ【名前変換可能】 (ページ37)

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＋残酷な描写あり（多分）ページ37

口角をわずかに釣り上げたルシファーだったが間もなく、目を大きく見開いた。

「しまっ」

咄嗟にルシファーはユーリを自分の方に抱き寄せて、視界を奪った。刹那、銃声が再び響きそれと同時に耳をつんざく何かが響き渡った。
　悲鳴。ただそれが何かの悲鳴だということは何故か分かった。

「あー、もう！君たち、最悪だねえ！悪魔の僕が言うんだ、よっぽどだよ！」

苛立ちを覚えたようなルシファーの声。一体、何が起きたというのだ。なんとか頭を動かして、ユーリは顔を出し息を止めた。
　ルチルの腹部が赤く滲んでいたのだ。先ほどの銃弾に撃たれたのだと理解するのは頭が追いつかなかった。石榴のような赤は、ぽたぽたと地面に広がっていく。悲鳴をあげることすらできず、頭が真っ白になっていくのが分かる。

　ユーリが顔を上げていることに気付いたルシファーは、わずかに顔を歪めた後。ユーリの目を手のひらで覆った。

「銀龍！聞こえてるなら魔法を止めて！死ぬよ！？本気で！」

　ただ、ルチルにその声は届いていない。それどころか、痛みすら感じていないのかわずかに口元だけがパクパクと動いていた。
　ルシファーはそれに「あー、もう！」と頭をかく。状態は最悪だ。想定外なことに敵国に先手をとられすぎていた。それだけでもまずいのに、ルチルが魔力を制御できなくなってるときた。
　何が最善かを考えるが、特にかしこいわけでもない頭ではどうもできない。もう、勢い任せで魔法を発動させて本人の意識をなんとか途切れさせるくらいしか思いつかないのだ。

「ルシファー！」

　その瞬間、ルシファーにとって聞きなれた声が聞こえてルシファーは視線だけ上げた。そして、眉をひそめたと同時にヒュゥと口笛を鳴らす。
　黒い情のない双眼は周辺の様子をじっと伺っている。黒いローブを風に揺らしながら、その人物は片腕をあげた。

「南西から攻撃、防御！」
「りょーかい！」

ルシファーはそう言うと、すぐさま魔法陣を展開する。簡潔なものではあったが、銃弾程度を防ぐには満足のいくものだった。

「ちょぉっとばかり遅いんじゃないかねえ……ノアール君？」
「……助けにきたんだ、勘弁してくれ」
「勘弁、ねえ」

ルシファーはそう言うと肩をすくめて、自分の胸の中にいる少女、ユーリを見つめた。彼女は小さな体を震わせて、唇を噛んでいた。これは、勘弁できるレベルだろうか。