【オリジナル】花売り少女と時止めさんⅣ【名前変換可能】 (ページ35)

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敵兵はルシファーの答えに顔をゆがめ、冷たく言い放った。
　ああ、どうしよう。どうしよう。追っ手を引き受けてくれたロイドにベル。味方だった人間を裏切ってまでユーリたちを守ってくれたドラン。彼らの言葉がひとつずつがユーリの胸を締め付けた。
　全員死んだら、意味がない。あの人たちの想いを裏切るわけにはいかないのだ。首に当たっている冷たい刃は怖い。泣き出してしまいそうに。でも、でも……ユーリはぐっと息を一度殺し、叫んだ。

「ルシファーさん、お願いです！私のことはいいので、街のみんなを……ルチルを守ってください！」

ユーリのその叫びは悲鳴に近かった。それにルシファーはヒュウと口笛を鳴らす。
　ルチルは、何があっても自分のことを見捨てないような気がしていた。だから、頼れるのはルシファーだけだったのだ。こんなことしたら、ルチルはきっと許さない。それでも構わなかった。彼らに任せられた、守ると誓ったのだ。
　ユーリの大きなターコイズの瞳から花びらがボロボロと溢れ始める。ルチルの顔が、見れなかった。大好きで……心から愛してるルチルの顔が。グッと唇を噛み締め、下を向いた。その瞬間、グッと刃物が強く当てられ「この女が！」と低い声が聞こえた。じんと喉元に痛みが走ったとほぼ同時である。

「ちょ、ちょ……！銀龍くん！おち、おち……つけないよねぇええ！」

ルシファーの焦った声が聞こえてユーリはわずかに、視線を上げた。そして、息を飲んだ。
　ルチルの赤と黄色の双眼は人のものではない黄金に変わっていた。しかもあの頬に銀色のうろこが浮かびあがっていたのだ。いや、頬だけじゃない手の甲や肩、お腹……肌の見えるあらゆる部分に出現している。
　それに驚いたのか、ユーリの首筋に当てられた刃も動きを止めていた。
　刹那、ルチルの足元に巨大な魔方陣が出現し、尋常じゃない風が巻き起こる。人の体を簡単に浮かすほどの風だ。近くにいたルシファーはとっさに羽を広げて、飛ばされたときになんとか体制を整えた。
　しかし、兵やユーリは当然飛ばされる。ユーリはきゃうと悲鳴をあげ、地面になんとかへばりついた。ああ、ああ……

「ルチル！ ……ルチル！」

ユーリは首の痛みを無視して声を張り上げた。けれどそれはルチルには届いていないのか、瞳孔は焦点があってないように思える。

「花売りちゃん！」